第十七章
「愛彩さん、千雪さんが好きな物とか、好きな食べ物とか、教えてくれる?」
私はリビングに顔を出した。
「え、いいけど……」
愛彩さんと向かい合って座る。
「えっとね、好きな食べ物は……あ、私の手作りプリンが好きだったなあ」
「プリン……」
一緒だ。
スマホにメモをする。
ていうか、愛彩さんの手作りプリン、食べてみたい……私もプリン好きだもん。
「あ、今度作ってあげる」
私の心を読んだ?と不思議になるようなタイミングで言われたので、少し驚いたが「うん」と笑って返事をした。
「あとはオムライスとか、オムレツとか、卵かけご飯とか……卵料理が好きだったよ」
「ふむふむ」
私も卵料理は好きな方だ。
「趣味とかだと、トランプが好きだった。ババ抜きとか、七並べとか……そういえば、スピードが得意だったかな。すごく上手だった」
スピード……私と一緒だ……。
「あ、ありがとう!」
私はお礼をしてから自室に戻った。
私はやっぱり千雪さんなのだろうか……?
頭がぐるぐると回る。
とりあえず、あとで愛彩さん達に見せよう。
「あっ……!」
スマホで色々と調べていると、【DNA親子鑑定】というキーワードを見つけた。
「これだ……‼」
【DNA親子鑑定】で検索する。
DNA親子鑑定とは、簡単に言うと相手と親子としての繋がりがあるのか、ないのかを鑑定するものだ。
方法は専用キットを使用し、検査する。
DNA採取専用の綿棒を口の中で数回こすると口の中の粘膜細胞が付着するので、そこからDNA検査をする、などの多数の検査方法があるらしい。
今すぐ愛彩さんに知らせよう、と私は一階に下りて愛彩さんに声をかけた。
「愛彩さん、愛彩さん」
「え? どうしたの?」
「私達の親子としての繋がりがあるのかを検査する方法を、見つけたの!」
「それ本当?」
「うん!」
私は精一杯頷き、愛彩さんにDNA親子鑑定のことを説明する。
「確かに……それならできるかも」
私の方でも調べてみるね、と愛彩さんは優しく笑った。
土曜日になった。
今日は、待ちに待った——いや、待ってないけど。石黒くんと自然カフェで食事の日だ。
朝起きて、顔を洗ってから愛彩さんの朝食の用意を手伝う。
真夏さんと真織さんが起きてきてからみんなで机を囲んで朝食を食べ始めた。
朝食を食べ終え、私は部屋で今日の着替えを選ぶ。
どんな服がいいのだろう……いや、普通の服でいいけどね?
服とにらめっこをしていると、スマホに一通のLINEが届いた。
『おはよう。今日、行けそう?』
石黒くんからだ。
私は少し高揚する胸を無視して、返事を打つ。
『おはよう。行けるよ』
すぐに返事がきた。
『よかった。今日の十一時半に自然カフェで』
『わかった』
そこでやり取りが終わる。
「あ、もう十時前……着替え選ぶ時間が長すぎた……?」
私は少し首を傾げてから、また服とにらめっこを始めた。
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