続 生きた証


まだ骨壺に入れられる前、火葬を終えたそれを見て、なんだか悲しくなった。

棺いっぱいに埋め尽くした花も、痩せこけた体も、安らかに見えた死に顔も、もう無い。

骨盤あたり、仰々しく埋められたボルトが鈍く光を反射していた。

最後に残ったのは、その人が苦しんだ証だった。


生きた証ってなんだろうか。

あれから何年経っても、結局わからない。

生きてる間に考えたって仕方ないとすら思うようになった。


終わりのない堂々巡りを無理やり切り上げるようとして、ベランダのコンクリートにタバコを押し付ける。

足元に残る黒く焦げ付いた跡、無数に散らばるひしゃげた吸殻。

ひょっとすると、案外こういうものを生きた証と呼ぶのかもしれない。

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まだ物語じゃない 宮本 @RaRaRa_212

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