繰り返し

出来ることがひとつ増えた。

その瞬間、世界をいちばん高くから見下ろした気分になる。

ここにあるものはなんだって見える。

ここではもう、なんだって出来る。

心地よい全能感に浸るのも束の間、目の前に扉が現れる。

なぜかそうするのが当然のように思えたので、扉を開け、その先へ踏み出す。

そこにはなにもなくて、

そこではなにも出来なくて、

自分の輪郭もわからなくなった。


ああ、そうだ、そうだった。

さっきまでいた世界でも、

最初はそうだった。


振り返ると、もう扉はどこにもない。

留まることも、後戻りすることも許されない。

やり直さなきゃ。また最初から。


その瞬間、地に足が着いた感覚がした。

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