俺はカミエル様のハートを撃ち抜きたい

第９話 破ることのできない約束

ある日の夜、寝ているとサイレンの音で目が覚めた。するとマークから電話が来た。すぐに基地に来いとの事だった。

俺は着替えて急いで基地に向かった。

部屋に向かっていると途中、違う部隊の人が話しかけてきた。

「あの〜、ルシファー・ファラクトさんですか？」

「はい、そうですが。」

「マークさんより伝言です。コントロールセンターに来てくださいとのことです。」

そう言うとどっかに行ってしまった。

コントロールセンターに行くとみんながいた。その他にも各キャプテンも集まっていた。モニターにはジェノサイドやレナトゥス、レボルシオンの人たちが映っていた。

するとゼウス将軍のホログラムが現れた。

「…敵が、進軍を始めた。第２世界へ侵入してきたやつもいる。敵は過去最大の多さだが、我々も負けていない。なんとしても人類に勝利をもたらせ。良い知らせを待ってる…」

ゼウス将軍がそう言うと、みんな気合の入った返事をした。

インモルターリス内ではすぐに戦略が話された。

ウィクトルは前線で戦うことになった。俺は絶対死ぬじゃんと思いつつ準備を始めた。

ジェイクが話しかけてきた。

この人はジェイク・ブラウンで料理担当。何日も外で任務をする時、みんなに美味しご飯を作るらしい。

「ルシファー、そんな怖い顔するなよ。気楽にしてたほうが良いぞ。」

俺は気づかないうちに怖い顔をしてたらしい。

「この戦いが終わったら、うまい飯作ってやるから。がんばれよ。」

「死んだら私がルシファーの墓作ってあげる！」

とルナが会話に入ってきた。

この人はルナ・ヒューストン。INDEPENDENTに入る前は、世界最大勢力のマフィアのアンダーボス（若頭）との噂がある。とても美人でしょっちゅうナンパされるらしいが、ナンパする側は命がけ…。

「縁起でもないことを言うな、ルナ。」

「ごめんごめん。でも、死んだら何もできないからさ、生きているうちにやりたいことはやっておいたほうが良いよ。」

今から戦いに行く人にかける言葉か？と思いつつ、２人のおかげで少し緊張がほぐれた。

『やりたいことか…』

俺は準備しながら考えていると、一つひらめき急いでカミエル様の所に向かった。

カミエル様は各キャプテンたちと作戦内容を確認し合っていた。

しばらくすると確認が終わったらしく、各キャプテンたちが部屋を出ていった。俺はそのすきにカミエル様に話しかけた。

「カミエル様…。」

「ルシファー君！？な、なんでここに。」

カミエル様が珍しく驚いた反応を見せた。俺は『かわいい』と思いつつ話を続けた。

「驚かせてすみません。伝えたいことがあって来ました。こんな時に失礼ですが、死んだら言えないないので言います。この戦いが終わったら俺と食事に行ってくれませんか」

すると、カミエル様は部屋を出ていこうと扉を開けた。

『やっぱり失礼だよな。こんな大変な時に自分のお願いだなんて。あぁ～、絶対嫌われた…。』

と思っていた時、カミエル様の声がした。

「伝えたいことって私と食事にいくこと？」

『怒ってるな…絶対』

「はい…」と弱々しい返事をした。

「私も伝えたいことがある。絶対に死なないで。」

「えっ…」

意外な答えが返ってきたので顔をあげると、恥ずかしそうにこっちを見ているカミエル様がいた。カミエル様は逃げるように部屋を出ていった。

『成功したのかな…？』俺は急いで持ち場に向かった。

【第一世界インモルターリス区域】

ウィクトルやいくつかの部隊が最前線の塹壕にいた。頭を出すとすぐに撃たれるという状況だった。

突然大きな爆発音がした。敵が迫撃砲で攻撃を始めたのだ。

塹壕に次々と砲弾が降ってくる。

INDEPENDENTは、ゼウス将軍の攻撃開始の合図を待っていた。

待っている間も容赦なく砲弾が降り注ぐ。

ついに待っていた言葉が聞こえた。

「…全軍攻撃開始！…」

その瞬間、塹壕にいる者たちがクリスタルを発動し、敵の拠点を目指して進み始めた。

俺たちも敵を次々となぎ倒し拠点を目指した。

俺はここで初めて戦場の恐ろしさを知った。

助けてくれという叫び。

人が焦げた臭い。

飛び交う銃弾。

飛び散る血や体の一部。

恐ろしくて怖いが逃げる場所なんてない。俺は今にも逃げたい気持ちをおさえながら戦闘を続けた。

周りを見ると明らかにこちら側の数が減っているのがわかった。

ウィクトルは俺の想像以上の強さだった。

カミエル様、マーク、ミール、ドレイク、ルナが前衛で戦い、俺、ナタ、ヘクター、ジェイク、ラムダが援護、ヴェスタルが後方支援と役割がはっきりしており、崩れることなく進むことができた。

だが、それが通用するのはクローン人間だけだった。

クローン人間の集団を抜けるとドレイクやカミエル様も見たことのない数の上位個体が現れた。

上位個体は、攻撃力、知能がクローン人間をはるかに超えている。人間がクリスタルを発動していたとしても、勝てるかどうかだ。俺は、偵察部隊救出作戦の任務で実際に体験した。

上位個体は、こちらに気づくとものすごい速さで向かってきた。

ここから先は死。

だが、俺は生きて帰らなきゃいけない。絶対に。

死の領域での真の戦いが始まった。