第52話・ハイエルフ

 【ユウトとゆかいな友だちのぼうけん・1】という絵本だが、せっかく司書さんにお勧めして貰った訳だし、読み始める。


 内容はユウトという一人の冒険者が様々な冒険を通じて仲間と出会い、別れ成長していくよくある物語だった。

 1では、町に攻め込もうとしてきたゴブリンキングを新しく出来た仲間と協力して倒し、最後は町の皆で喜び合ってお終いという形だった。

 絵もコミカルで可愛らしく、絵本って言葉がよく似合う、子供でも理解出来そうなシンプルな話だった。


 せっかくなので2を読もうと探してみるが見当たらなかった。

 しょうがないので、司書さんに聞いたところ、2含め、99まで数十年以上前に紛失してしまったらしい、残ってるのは1と100のみらしい。

 

 何ともキリの良い所だけ残ってるなと思いながら、一応100を読んでみる。

 100では、最強最悪の魔王・サタンをユウトと仲間達が数多の犠牲の果てに討伐する話だった。

 そして討伐を終えた最後、ユウヤ含め仲間達全員が跡形もなく消滅したという文言を残して話が終わった。

 後に残ったのはユウトとその仲間達の身に着けた装備と荒れた大地とそれを見て泣く一人の耳の長い女性だけであった。

 コミカルで可愛い絵だったが、逆にそれが恐怖心を煽ってきた。

 そして、俺は最後のページを開く。


 そこにはこう記されていた。


「~親愛なるユウトとその仲間達の冒険が後世に残ることを願う~」

  ハイエルフ・【ルミエール・バレンティ】


  と。



 ・・・・・・・・・



 ハイエルフ、ライトノベルの知識通りながら、エルフの上位種であり1000年以上ないし永遠の時を生きる気高き存在。

 精霊魔法を操り森を好み、森に住まう、耳の長く美しい容姿を持った存在。


 なるほど。この人ならば生きている可能性は充分にあり、1周目の世界の俺達の事を知っている可能性があるな。


 会えたら何か情報が手に入れれそうだが、まあ、何処にいるか分からないし、会うのは難しそうだな。


 ・・・・・・・・・


 一応ダメもとで司書さんに聞いてみるか。


 聞いてみた、結果は知らないだった。

 それはそうだ。


 今の俺では会えそうにないし、そういうエルフがいて、1周目の世界の俺達を知ってる可能性があるということだけを頭の片隅にとどめておこう。


 ただ、今回この絵本を読んで一つ興味深いことがった。


 それは俺含め仲間達、否、プレイヤーが魔王・サタンを討伐した時に消滅したという情報だ。

 理由という点でいえば1周目が終わったから運営の手によって消滅させられたと考えるのが妥当だろう。

 これ即ち、300年前にいきなり消えた英雄がいれば、それは全員プレイヤーであるということである。

 といっても、だからどうしたという点でいえば、まあそれはそうだが、これも何処かで使える可能性があるし頭の片隅に置いておこう。


 まあ、いいや。取り敢えず、他にも300年前について書かれた本を探して読んでみようか。


 俺は司書さんに聞き、他にもお勧めの本を探して貰うのだった。


 

 


 

―――――――――――――――――――


 大学の課題がクソ過ぎて終わらん。

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俺だけ【死に戻り】出来るデスゲーム ダークネスソルト @yamzio

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