The Seventh Day


――――――あなたは、本当の死とは何だと考えますか?

――――――あなたは、自分に本当の死が訪れたら、と考えたことはありますか?

――――――もし、自分が本当の死が目前だとしたらどのような行動を取りますか?




先のことを説明するには約6時間前に遡る必要がある。




6時間前。



「待たせたな」


相川さんが駅の改札から出てきてこちらに気付くと手を上げてこちらにやって来ました。


「いえ。わざわざありがとうございます」

「とりま、行こうか。何処に行くかどうか決めてるのか?」

「えぇ。勿論。最近行ってる寿司屋です」

「ちょっと待っててくれないか?トイレに行ってくる」

「えぇ。どうぞ。

「ん、んん〜?ナンノコトカナ?(普通にATMに行くって言ったほうが良かったのかな?というか絶対に財布が持たん)」


なんか相川さんがブツブツ言いながらトイレとは逆の方に行ってしまいました。

あ、やはりATMですか。

【死神の鎌は既に振り上げられていることに誰も気づかない】

しばらくして戻ってくると、私達はそのまま寿司屋に入りました。


「いらっしゃいませ」

「今日3人で」

「へい。了解っス」

「いつも来てるのか?」

「いえ、1週間に1度程度です」

「大分来てるな」

「まぁ、そういう事になるんですかね。常連ってやつです」

「うん。分かった」


相川さんはうなずくと案内されたカウンター席に座る。

【それが死へのカウントダウンとも知らず】


「――――にしても、よくこの高級寿司屋に来る財力があるな」

「まぁ、仕事もしてますし」

「私も」


姉と私はそれぞれ仕事をしているのでそれなりの収入があり、毎週何処かで行こうと決めてるんです。


「とりあえず、相川さん。ごちそうさまです」

「ごちそうさま〜」


本日は相川さんの奢りということなので遠慮なく食べましょうか。

【それが命取りとなるとも知らず】


「好きなだけ食えばいい」

「ありがとうございます」

「さすが〜」


姉は相川さんのことを何だと思ってるんでしょう。

【誰も死神の鎌が首に突きつけられて居ることは知ることが出来ない】

と、思った矢先でした。

【死神はまず1人に天罰を下した】


「グアァァァァァァァ」

「皆さん、その場を動かないでください!!!大丈夫ですか!?」


私はその倒れた人に駆け寄ると、声をかけました。


「ダメですね。相川さん」

「あぁ。今かけてる。―――――あ、緑川警部、実はですね・・・・・・」


私は懐から10円玉を取り出すと、まず茶に半分ほど入れました。

特に何も怒らないことから毒ではないと判断できました。

毒が入っている場合、酸化還元反応が起きるので分かります。

【そして死神は2人目に手をかけた】


「グ、グアァァァァァァ」

「な!?」


私はその人に駆け寄ると、生存確認をした後、酸化還元反応を調べましたが、先程同様全く反応しませんでした。


「――――――まさか。相川さん、お姉ちゃん、外に出てください。皆さんも!!」

「ん?あぁ」

「は〜い」


私は2人を外に出すと、2人の方が倒れた方、店の裏方へと向かいました。

一応気化性の毒を警戒するためにマスクを付けて向かう。

裏方のカーテンを開けると、そこにはペットボトルから液体が溢れていました。

【それが最後の時とも知らずに。死神は鎌を振り下ろそうとした】


「まさか――――!!」


私はすぐさま飛び退き、カーテンを閉めました。

【運良く生き残ったものは、かえって時間が経つほど苦しむことも知らず、生き続けることになる】

そして店の外に出ると深呼吸をして体内に入ってしまった気体を外に出しました。


「どうだった?」

「えぇ。おそらくサリンだと思われます」

「なるほど。だったら先日の田河容疑者と田島容疑者の仕組みか」

「そうなりますね。または共犯者がここにいたか」

「なるほど」

「とりあえずメンバーが揃うまでは待機ですね」

「そうだな」


警察が到着し、現場などの検証が始まり、救急車に乗せられて被害者は運ばれていきました。

容疑者は8人。

店の店主、バイト人、従業員1人、私、相川さん、姉、残りは客です。


「・・・・・・んー。どうしましょうか。このまま私は何もしないという選択肢もあるのですが・・・・・・」

「働け」

「ですよねー・・・・・・」


姉に睨まれてやることにしました。


「1人1人の事情聴取は殆ど無意味に近いので止めましょう」

「そうだな。とりあえずサリンは撤去済みだ。現場検証は任せる」


相川さんは手袋をはめて中に入る。

私も続いて入るとまず、裏方に行きました。

【まだ死神が居るとも知らず】


「あ、それより先に寿司に毒が含まれていたとか無いんですか?」

「いや、今解剖中だが、おそらくサリンだと思われる」

「ありがとうございます」


後はこちらでやったほうが速そうですね。



その日の夕方。


「どうだ?分かったか?」

「いえ。何も分かりませんでした。分かったのはやはり田河と田島が関わっていることくらいですね。これから2人に事情聴取することは可能でしょうか?

「可能だな」


【自らの死を近づけていることに気付かない】


「なんだったら今から行くか?」

「そうさせていただきますか」

「おう。じゃぁ連絡しとく」


相川さんは連絡を取るのを見送ると、私はそのまま警視庁の方へ向かいました。

【死への一本道】


「――――ということでお訊きしても宜しいですか?」

「まぁ、俺に答えられることなら何でも」

「では早速。あなたは先日、寿司屋に行きましたか?しかも直近で」

「いえ。俺は行ってません」

「俺?」

「まぁ。行ってないものは行ってないので」


私の勘がこれ以上踏み込んではいけないと言っています。

きっとこれ以上はなにかあるのでしょう。

【その勘は正しかった。これ以上踏み込めば確実に葬られていたとも知らず】


「では、田島さんが行ったという判断で宜しいですか?」

「・・・・・・」


だが、私は踏み込んだ。

この事件には何かがあると思って。


「・・・・・・。なるほど。サリンですか?」

「えぇ。もしあなたでないと言うなら田島さんしか・・・・・・」

【死神の鎌は確実に首を捕らえた】

「そうですね。もしこれが他の人に聴かれてればよかったですね」


田河はそう言うと私の首をめがけて爪を突き立て、


「オルアァァァァァァ!!」


こめかみを正確に抉り取りました。

それだけでは収まらず、私の急所を蹴り上げ、意識を確実に刈り取りに来ました。

まさかこうなるとは予想しておらず、無抵抗でこれを受けることになってしまいました。

【そして死神は確実に首を刈り取った】

異変に気づいた警察官が駆けつけてきたのを見て、私は意識を手放した。



事実を知るものは私しかいない―――――。

ここで私が死ぬのは宿命だったのかもしれない――――。

【だが、死神はミスをした。この探偵の生命力を見くびっていたのだ】

だけど――――。

ここで死ぬ訳にはいかない――――!!


「・・・・・・か・・・・・・・・・・・・ずか・・・・・・・・・・・・閑華!」


目が覚めるなり、私に抱きついてくる人が1人。

姉でした。

その隣には相川さんもいました。


「目覚めたか、安城。済まない。私の警戒が怠っていたばかりに」

「・・・・・・いえ、相川さんは悪くないですよ。私がこうなることを予想してなかったのが穴となりましたね」

「そんなことはない。とりあえず、今日はゆっくり寝ろ」


私は相川さんに言われて寝ることにしました。

【死神は3年後、死ぬ宿命にある名探偵を必ず殺すと思いその場を後にする。そして死神の決意は固い。狙った獲物は絶対に狩る、それが死神である】



私は3年後、この事件を完全に解くことになる。

この事件は地球の存命が掛かっている事も知らず。

また、それがこの事件がどれだけ重要だったかも思い知らされる。

そして、未だ発見されていない物語を築き上げることになる。




≪The Seventh Day was Finishing, And To Be Continued...≫



〜作者あとがき〜


こんにちは、雪花涼麗せつかりょうれいです。

まずは、ここまでお読み頂きありがとうございます。

さて、この話は今連載中の中2編の次、中3編の布石とさせていただいております。

この話を念頭に中3編は進めさせて頂きます。

また、大分ネタバレを入れてしまい、申し訳ありませんでした。

これからもどうかよろしくお願いします。

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安城閑華の1週間 雪花 涼麗 @nEzum1

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