二十句連作 「子どもの四季」
子どもの四季
【餅つきの杵より小さき赤ん坊】
現代で餅つきをする家庭は殆どないが、町内会などではまだ行っているところもあるだろう。親と一緒に杵を持ってみるが、まだまだ杵の方が大きくこれからの成長が楽しみである。
《季語》餅つき
【まだ眠いとぐずる寝癖の葱坊主】
春先はとかく眠い。それは子どもも同じかもしれない。ぐずって起きない子の髪がまるで
《季語》葱坊主
【呵呵と春小さき靴より砂の滝】
大笑い(
《季語》春
【あと少し届きそうな手こいのぼり】
雄大になびくこいのぼりに手を伸ばすが、届きそうで届かない。大きくなれよ、と微笑ましく思うものだ。
《季語》こいのぼり
【水たまりのぞき込む子よ雨蛙】
子どもは水が好きだ。水たまりを見つければ、目が輝き出す。しゃがみこんでじっと覗き込む姿はまるで雨蛙のようだ。
《季語》雨蛙
【雨音やツーステップの子も髪も】
雨は子どもにとって楽しいものである。まだスキップが上手くできずツーステップになりながらも、雨音に合わせて踊っている。髪の毛もフワフワとなんだか楽しそうである。
《季語》雨音
【鼻摘まむ子の二寸先のどくだみや】
どくだみの臭さはなかなかのものであるが、思いきり顔を近づけ嗅ぐ子どももいる。だが、あまりの匂いに思わず鼻を摘まんでしまう。やめておけば良いものを…と大人は思うが、子どもには冒険なのだろう。
《季語》どくだみ
【夏芝に寝転ぶ兄弟影さえも】
気持ちの良い夏芝に兄弟揃って寝転がる。影までもがくっつき合ってじゃれている。
《季語》夏芝
【幼稚園帰路に氷菓を母と分け】
夏の暑い時、まだ日が高いうちに帰る幼稚園。あまりの暑さにちょっと寄り道してアイスを母と分け合いながら食べる幸せ。
《季語》氷菓
【缶にすし詰め団子虫たちの夏】
なぜ子どもはこんなにも団子虫に惹かれるのか。缶にぎっしりと詰め込み宝物のように愛でるが、当の団子虫たちはたまったものではない。
《季語》夏
【小さき手入道雲を食わんとす】
入道雲が美味しそうに見えるのだろう。ホイと掴んでパクっと口に入れてみる。そして嬉しそうにニヤリ。どんな味がするのだろうか。
《季語》入道雲
【洗濯機ポッケの蝉は生きていた】
ズボンのポケットに入れて持ち帰った蝉。そのまま洗濯機へ入れてしまったが、なんだか洗濯機の様子がおかしい。洗濯する前には必ずポケットを確認すべし。
《季語》蝉
【夏の夕牛乳のひげ舐める子よ】
夏の牛乳は格別なものがある。口の上についた牛乳がまるで髭のようになり、ペロリと舐めている。
《季語》夏の夕
【ゆっくりと歩く子の足みの虫と】
蓑虫はヤドカリのように簑から半身を出して移動する。そんな
《季語》みの虫
【五分かけ栗掴まんとす子ども箸】
栗のように掴みにくい食材を、覚えたての箸で一生懸命掴もうとしている。気が付けばその間5分。子どもの集中力には目を見張るものがある。
《季語》栗
【サルビアの蜜一心に吸う頬よ】
サルビアの蜜は甘く、子どものちょっとした楽しみである。一心不乱に吸っている頬のぷっくりと可愛いことよ。
《季語》サルビア
【干し柿を揉む子わずかに噛りにけり】
干し柿は干して数日したら揉むのが一般的な作り方である。竿からいったんおろした干し柿を目の前で揉んでいたら、パクリ…。思わず食べたくなってしまうのも無理はなかろう。
《季語》干し柿
【逆上がり出来ぬと突っ伏す冬休み】
少しずつ様々なことができるようになると、難しいことにも挑戦したくなるものだ。だが逆上がりの難しさの前には悔し涙も出てしまう。寒さも相まって、なかなか思うように体は動かない。
《季語》冬休み
【熱の子の口ずさみたる子守唄】
高熱で寝込んでいる子どもを見るのは辛いものがある。子どもはといえば、自分が親からいつも歌ってもらっている子守唄を虚ろに口ずさんでいる。
《季語》熱
【曾祖父の袴短し七五三】
ひいおじいちゃんから代々受け継いできた七五三用の
《季語》七五三
※本作品は応募してません《カクヨム短歌・俳句コンテスト俳句部門》─解説入り 花邦イチ @Hanakuniichi
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