第2話 ライホウシャ
大内は何度も鳴らされるインターホンに苛立ったのか、床を強く叩いてから観念したように玄関へとゆっくりと歩みを進めた。
「うるさい」
大内がドアから顔を覗かせそう叫ぶと、来訪者は大きな溜め息をついて、
「先輩、今回の仕事は趣味全開で出来るのは分かりますけど、あんまりスタンドプレーをされますと……」
「ああ、わかってる。まぁ入れよ。」
大内は来訪者を招き入れると乱暴にドアを閉める。
「まったくお前はもう少しタイミングというものを考え来いよな。ターゲットはこれから風呂にはいるところなんだぞ!」
大内が盛大に唾を飛ばしながら来訪者に言うと、来訪者も負けじと眉間にシワを寄せながら、語気を荒げ
「だ・か・ら!趣味に走らないで下さいって、言ってますよね。部屋中にターゲットの写真を貼っちゃって……出るときに大家さんに怒られますよ?」
部屋中に張られた香織の写真を見て、また溜め息を付いた来訪者は呆れ顔だ。
大内はそんな指摘に来訪者をゆび指しながら、
「雰囲気だ!雰囲気!わからないのかお前には!このターゲットの視線に常にさらされる快感が…ほら見てみろこの香織の笑顔良いだろ?なかなか笑わないんだぞアイツは!それにこの走ってる必死な顔も良いだろ!何よりこれは撮るのが大変だったんだぞ!」
部屋中に張られた香織の写真をひとつひとつゆび指しながら熱く解説をする大内に来訪者は冷たく、
「わかりません!」
ピシャリと話を終わらせる。
「そうか…この良さが分からないのか…」
「分かりませんね。それよりも今日の収穫はあったんですか?」
大内は来訪者の問いに小さく溜め息を付き、肩を丸めてとぼとぼと手袋をしながら収納ボックスへと歩いて、先程しまったペットボトルと吸い殻を取り出す。
「ああこれだ…」
そう言って指でつまんで来訪者へと差し出す。
来訪者も手袋をしてうけとると、
「これで被疑者のDNAが採取できますね。」
「ふん、仕事に真面目なお前にはこの素晴らしさは分かるまい…」
大内は不機嫌そうに来訪者を手で追い払った。
ツキマトウ 業 藍衣 @karumaaoi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます