『最後の一箱』 しぇもんごさん
〇作品 『最後の一箱』
https://kakuyomu.jp/works/16818093086482612910
〇作者 しぇもんごさん
【ジャンル】
恋愛
【作品の状態】
2,000字弱の短編・完結済。
【セルフレイティング】
なし
【作品を見つけた経緯】
カクヨムサーフィンしていて見つけました。
【自主企画の参加作品のようです】
字数は2,000字以内で、お題は「一角獣のため息」とのこと。これを踏まえて読ませてもらいました。
お題にある「一角獣」には単純に三つの解釈ができるようになっています。
「一角獣」には三つの意味があって、一つ目は「イッカク」と呼ばれる北極海にすむ海の生き物のこと、二つ目は麒麟のこと、そして三つ目がユニコーンがあります。
しぇもんごさんはどうやら一つ目の「イッカク」として「一角獣」を捉えたようです。さてさて、どのようなお話なのでしょうか。
【ざっくりと内容説明】
煙草を箱から一本出したときに思い出す、一番目の彼女の話。
【今回の感想は】
結末が何となく察せるような内容になっている……と思います。そのため読む際はお気を付けくださいませ。
【感想】
味のある作品だなと思いました。
上記に記したように、語られるのは「煙草を箱から一本出したときに思い出す、一番目の彼女の話」だけなのですが、語り方が上手いです。
主人公の「俺」は、中学生の秋に「岩永」という同級生と付き合うことになります。お互い好きで付き合ったというよりも、周囲が「俺」の友達と「岩永」の友達と付き合うようになったこともあり、友人らに
そのため長くは続きません。唯一恋人のようなことをしたのは手を繋いだことだけ。ゆえにひと月後二人は別れ、友人同士で楽しく話す元の関係に戻ります。
それから「俺」は高校、大学と彼女ができます。それぞれの彼女の違いが端的でありながらも特徴を捉えるくらいに書いてあって、「俺」が一番目、二番目、三番目とどんな彼女と付き合ってきたのかが掴めるようになっています。
三番目の彼女に振られたあと、「俺」は少しばかりホームシックになったこともあり、時折地元に帰ります。週末に高速バスで地元に帰り友人たちと酒をかわすなか、一度だけ「岩永」と飲むのです。
そのとき彼女は煙草の箱からきれいに一本だけを取り出して「俺」に渡し、あることを問います。
さて、「岩永」が「俺」に言った問いとは何だったのでしょうか。そしてどうして「俺」は箱から出した一本の煙草を見て、彼女を思い出していたのでしょうか、というのがこのお話です。
思うに「俺」にとって、中学生のときの「岩永」との恋人関係は思い返すと特別だったんじゃないかなと思います。
「最初の彼女」ということもありますが、「俺」の二番目、三番目の彼女の印象は、別れたときのしかないのです。二番目は執着しないような人で、三番目はちょっと「俺」に対して不満があったのか、新しい彼氏のいいところを淡々と語って去っていく人。
しかし「岩永」のときだけは付き合っていたとき、唯一あった恋人らしい行為——「手を繋いだときの彼女の体温」を思い出しているので、そう思いました。
また個人的に面白いなと思ったのは、「俺」と「岩永」が再会したことによって思い出すことが「手の熱さ」から「物」へ変わるところです。
彼は「岩永」と再会する前までは、彼女の話を人から聞くたびに手を繋いだときの体温を思い出します。それが再会することによって「箱から出した一本の煙草」になるのです。
きっと中学生のころの「岩永」がいなくなり、大人の女性になったこと(=「一角獣」に繋がります)に「俺」が気づいたからなのかなと個人的には思いました。(でも、変わっているのは「俺」もなんですけどね……)
ただ、二人が元の関係に戻れるかと言えば、そういうことでもなく……。
ビターで大人な内容ですが、純情なお話だと思います。
気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。
今日は『最後の一箱』をご紹介しました。
それでは次回、またお会いしましょう。
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