10月

『仲良し三人組の関係が壊れた日』 ゴオルドさん

〇作品 『仲良し三人組の関係が壊れた日』

 https://kakuyomu.jp/works/16818093073255685783

 

〇作者 ゴオルドさん


【ジャンル】

 エッセイ・ノンフィクション


【作品の状態】

 5,200字の短編・完結済。


【セルフレイティング】

 なし


【作品を見つけた経緯】

 ゴオルドさんの作品なので、いつも通りの理由です。


【ざっくりと内容説明】

 作者さんが経験した、友人同士の衝撃的な出来事が語られます。


【コンテスト】

〇『黒歴史放出祭』参加作品で、市川先生が選考した最終選考対象作品に選ばれています。下記URLより選評内容を読むことができるので、よければ合わせてどうぞ。

https://kakuyomu.jp/info/entry/8th_anniv_kurorekishi_result


 市川先生の選評は、短いながらも端的にこの作品のことをまとめていらっしゃっていてすごいなと思ったのと同時に、読む人によって印象に残る部分も違うというのを改めて感じました。また違う視点からこの作品を読めるのではないかなと思います。

 

【感想】

 今回は感想を語る前に、作品の内容を軽く説明しようと思います。


 作者さんが小学四年生のころ。

 その日は残暑の厳しい日で、放課後に二人の友人と夕日色に染まった原っぱに出かけます。


 友人の一人は、本間さんこと「ホンコちゃん」。彼女はこのところ、作者さんとの遊ぶ約束を破ることが多かったそうで、「遊びに来て」というから家に行くと留守だったり、「明日一緒に学校に行こう」と言われたのに、いつまで経っても来なくて待ちぼうけされるということがあったそうです。


 ホンコちゃんが作者さんとの待ち合わせや遊ぶときの約束を破るときは、決まって二人でのときで、彼女はいつも故意に破ろうとしていました。

 この点について納得がいかなかった作者さんは、ホンコちゃんに問いただしたようなのですが、暖簾のれんに腕押しというかのように、まるで反応をしないというのです。


 こんなふうにされたら、誰しも相手に嫌われたと思うことでしょう。作者さんもそう思いました。ですが、顔を合わせるとホンコちゃんは何事もなかったかのように、これまで通り「友だち」として振舞うのです。不思議ですね。


 作者さんにはもう一人友人がいました。

 緒方さんこと「オカリン」です。作者さんいわく、オカリンはホンコちゃんの子分だったため、言いなりになっていたそうなのですが、作者さんとホンコちゃんの間に入って上手く三人でいられるような役割をしていたようです。優しい子ですね。


 その三人が、原っぱで何をしていたかというと、そこに埋まっているとされているあるものを掘り起こそうとしていたんです。まあ、それが何なのかは作品を読んで確認していただくとして、土に埋まっているものを掘り出す作業は中々大変ですよね。一所懸命に、三人で作業を進めていたのですが、あるとき土を掘るときには絶対に聞こえない「くちゃ」というような音がするのです。


 どうやら、ホンコちゃんとオカリンが、作者さんに黙って何かを食べているようなのです。最初は無視していた作者さんもさすがに気になって、ホンコちゃんたちに尋ねました。ですが彼女は故意に約束を破ったことを責めたてたときと同じように知らぬふりをし、ホンコちゃんの言いなりであるオカリンは当然のごとく何も言いません。


 このとき、最近のホンコちゃんの態度に腹を立てていた作者さんが言い返します。そして彼女の弱みを逆手にとって、ここぞとばかりに言葉の刃を向けるのでした。


 さて、この後どうなったのか、というのがこのお話です。


 読んで思うのは、作者さんの気持ちもホンコちゃんの気持ちも分かってしまうからこそ、何とも言えない気持ちになるという感じですかね。


 作者さんがホンコちゃんにされたことは、やっぱり私もいいとは思えないですし、腹立たしくなるのも分かります。


 そもそも、「どうして約束を破るの?」という問いに対して(作中では「責めた」ということになっていますが内容が分からなかったので、「問い」ということにしています)、どうしてホンコちゃんは無反応になるのか、そこがもう分からないです。反応が無くなってしまったら、こっちは何のしようがないじゃないですか。話す余地なし。


 せめて「ごめんね」って言ってくれたら、許せるところもあると思うんですけど、それもない。

 でも、友達として振舞ってくる。

 それはつまり、「約束を破ることは容認して」ということのように思います。

 だけど、「故意に何度も約束を破っていい友だち」なんて、やっぱり納得できないですよね。


 ただ作者さんもおっしゃっていたことですが、ホンコちゃんの弱みを使い、言葉の刃を振るってしまったことはやはり良くなかったことだとは思います(それくらい腹を立てていたということだとは思うんですけどね……)。ホンコちゃんもそうですが、言って後悔することになった作者さんも辛かったと思います(過去形になっているかは分かりませんが……)。

 

 作者さんがまとめに「『言いたいことが言えるほうがいい』と思ったことがある」と書いていらっしゃいましたが、私も子どものときにそう思っていたことがありました。言われっぱなしが多くて、言い返したかったんですね。

 ですが時を経るにつれて、それがいいことであるとは思わなくなりました。

 もちろん、言いたいことが言えることで自分を守れることもあると思いますが、言葉で伝えるって難しいんですよね。そこがよく分かっていないと、大変なことになります。


 ですから、言葉を人を傷つけるための武器にする人たちを見ていると、「言いたいからといって言っていいわけではないのに……」とよく思います。


 それぞれの人の心の中は自由です。ですが、言ったら傷つくようなことを「言葉」という形にして、伝えてはいけないのです。相手が傷つくような言葉は時に鋭い刃となって、心を切ります。そして相手を切った刃は、時に遠回りに自分や周囲の人をも切ることがあります。


 作者さんの場合は相手を切ったはずの刃が、自分の方に向かってきて切ってしまった。

 そしてこれがあったことで、ご自身の考え方を変えるきっかけになったのかもしれません。とても辛かったと思いますが、だからこそ作者さんには言葉がどう作用するのかが分かっているような気がいたします。


 まとまりのない感想になってしまいましたが、最後の展開にきっと皆さん驚くことでしょう。気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。


 今日は『仲良し三人組の関係が壊れた日』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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