4月 April

第43話 『割れまして、爆誕』 ゴオルドさん

〇作品 『割れまして、爆誕』

 https://kakuyomu.jp/works/16818023213593829632

 

〇作者 ゴオルドさん


【ジャンル】

 エッセイ・ノンフィクション


【作品の状態】

 6,000字弱の短編・完結済。


【セルフレイティング】

 なし


【作品を見つけた経緯】

 ゴオルドさんのエッセイはこれまでも何度かご紹介しており、今回新しいエッセイが投稿されていましたので読んできました。


【その他】

「黒歴史放出祭」の参加作品


【ざっくりと内容説明】

 ご自身が置かれていた状況について、書かれています。


【感想】

 今回ご紹介するお話ですが、率直にすごいと思いました。


 焦点を当てたご自身の出来事もそうですし、起きた状況を上手く伝える技量もあって、読み手にぐっと伝わってきます。


 一方で、作者さんにとって、とてもセンシティブな内容だったのではないかと思い、大丈夫かなという心配もしながら読みました。


 ですが、きっと同じ悩みを持つ人や、もしかすると気づいていないけれども、同じ状況にある人に何か伝わるメッセージもあるのではないかなとも思います。


 何というか、そういう人に伝わって欲しいなと、そう思ったエッセイでした。


 まず読んでいくと、作者さんの両親は、「子どもに心があることを認識できない人だった」ということが書いてあります。そのことについて、「喜怒哀楽を親に合わせることが求められていた」(『割れまして、爆誕』より引用)というふうに書かれています。


 子どもだって、それぞれ色んな感情を持っているのに、親に感情を合わせなければいけないと言うのはとてもこくなことです。


 例えば、父親がテレビを見ていて、幼い子どもが「これをみたい!」と言ったのに、「ダメだ」と言われたら、悔しかったり悲しかったりして泣くこともありますよね。

 ですがこのときに泣いてしまうと、「どうして泣かなくちゃいけないんだ。お父さんが楽しくテレビを見てるんだから、楽しくしていたらどうだ」と言われてしまうのです。


 そういう状況があったことが影響したのか、さらに作者さんの中には、自分の考えというものがなく、人とのやり取りを「親の考え」と「世間一般の考え」(『割れまして、爆誕』より引用)で、やり過ごしてきたというのです。


 これでは、物事の良し悪しが自分で判断することができず、ただ周囲が流れていくほうに、身を任せてしまうことになります。それにより、作者さんはある人を思いがけずことばで傷つけてしまうことになるのです。


 そこまで読んで、私は複雑な気持ちが渦巻うずまきました。

 純粋で素直な心を持った作者さんは、ご両親の言うことを聞いて育ってきたわけです。家にいるときはそうするしかないのもよく分かりますし、そもそもそれ以外の考えが生まれるのも中々難しかったことでしょう。


 そして知らず知らずに、自分自身を押し殺し、他者とのやりとりに軋轢あつれきを生んでしまっているというのは、とても悲しいなと思いました。


 しかし、作者さんは大学生のとき、あることをきっかけに「自分の考え」というものを考えるきっかけを得ます。

 そのときの衝撃とはどれほどのものだったか。


 ですが人は、一度信じたものを変えるのはそう容易ではありません。

 何故なら、信じてきた自分を否定することになるからです。


 ゆえに、作者さんは初めて手にした「自分の考え」というものに向き合う危うさのようなものを感じていました。でもガラスのように割れそうなそれがとても大切なもののようにも思えていたので、「夜にそっと取り出していろんな角度から眺めて考えていた」(『割れまして、爆誕』より引用)のです。


 そしてついに、作者さんは、自分の気持ちに従って、自分の行動を決めるようになります。


 さて、どんな出来事があったのでしょうか。


 気になった方は、読んでみてください。

 複雑な気持ちが渦巻くかもしれませんし、読んだ後に上手く言葉にできないかもしれませんが、その「もやもや」としたものや、作者さんが宝物にした大切なものについて、感じてみて欲しいなと思います。


 今日は『割れまして、爆誕』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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