第36話 『たったひとつの「ものさし」』 小烏 つむぎさん

〇作品 『たったひとつの「ものさし」』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927861713543270

 

〇作者 小烏 つむぎさん


【ジャンル】

 詩・童話・その他


【作品の状態】

 7,000字弱(朗読用バージョンを含める)の短編・完結済。


【セルフレイティング】

 なし


【作品を見つけた経緯】

 小烏さんの作品は以前から読んでいて、「童話の引き出し」というコレクションからこの作品を見つけました。


【もしかすると気になるところ】

 段落の字下がりがバラバラのときがたまにあります。


【ざっくりと内容説明】

 北の大地にある広い森で生きる、一頭の熊の物語です。


【感想】

 作風は童話です。

 地の文が「です・ます」調で、語り口も柔らか。そのため誰でも、するっと読み始められると思います。


 舞台は北の大地。そこにある広い森に住んでいるのは、一頭の熊だけ。

 理由は、食料となる食べ物があまりない――とのこと。


 その熊の森ですが、遠くから来た鳥が種を落とし、その種が芽吹くと、だんだん森が豊かになっていきます。するとこれまで熊だけだった森には、様々な動物が集まってくるようになるのです。


 このお話の重要な点は、タイトルにもある『たったひとつの「ものさし」』という部分。「一つのものさし」を押し付けることによって、相手を傷つけてしまうというのが、テーマになっています。


 きっと皆さんも読めば、何かしら心当たりがあるのではないかなと思うのですが、私はこれを読んだ後にYahoo!ニュースで次のような話を読みました。


 電車の優先席に若い女性が座っていたのですが、女子高校生に足をけられたというのです。高校生の傍には高齢者の方がいて、その人のためにゆずるべきだという正義感から行動を起こしたのだろうと思いますが、若い女性は妊婦さんだった――というもの。

 そのあと女性が席を譲ったあとに、女子高生は彼女の鞄についていたマタニティマークのキーホルダーが目に入って妊婦だということに気づいたそうで、小声で「あの人妊婦だった……」というようなことを話していたのが聞こえたそうです。


 若い女性は、このときの状況について「正義感が怖かった……」とのこと。


 この話を知ったとき、これも一つの「ものさし」なのかなと……、小烏さんの作品を読んで改めて思いました。


 女子高生は、きっと正義感のつもりでやったのだろうと思います。 

 ですが一方的なものの見方、つまり「若い元気な女性」と決めつけたことで、結果的に若い女性の気持ちを傷つけ、恐怖心を植え付けることになってしまいました。


『たったひとつの「ものさし」』の中でも、熊が渡り鳥のためを思って助言をします。ですが、それは熊にとってはいいことでも、渡り鳥にとってはそうではないのです。

 この物語で思うのは、「相手の話を聞くこと」これが大切なことなのではないかと思いました。


 どういうことなのか、気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。


 今日は『たったひとつの「ものさし」』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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