独吟俳諧歌仙「少女らの」の巻

鈴呂屋こやん

独吟歌仙「少女らの巻」

少女らの小さな嘘よ聖五月

  白い清楚な薔薇を手に取る

宵闇の園はほのかに薫るらん

  露のみ残し雨がかき消す

ひなびたるの運動会の声も止み

  一人の部屋に灯るPC


戸を開き取る食べ物の味もなく

  熱はなくても続く休暇よ

仕事場は元に戻らず年暮れて

  キーウも遠き雪原を行く

偽りの声や噂の弾丸に

  病んでも愛は変わらぬものを

花のように短い時を命にて

  朧の月に遊べや遊べ

春宵にみんな集まるガード下

  満員電車また過ぎて行く

なぜだろう足がすくんだ雑踏に

  ぶつかってきた君の可愛さ


その傷は何の魔の手を逃れてか

  暗い森には茂る深草

召喚の戦士はここに眠るらん

  野営の飯に醤油欲しがる

砂漠にも水路を引いて祝う頃

  山の村では初孫の声

色もなき俳句を一句書き添えて

  只で貰った本がまた増え

秋が来て忙しくなる営業に

  朝顔の咲く前に家出る

月残る金星木星他の星

  そのどれよりも君が綺麗だ


歓楽の街の虚飾の片隅で

  愛を偽る牧師微笑む

なかなかにこの世の道は金の沙汰

  過ぎゆく時はつちふるの中

寺さびて寿命も近い花咲けば

  古い狐のやしろ長閑に

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独吟俳諧歌仙「少女らの」の巻 鈴呂屋こやん @manyashoya88

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