売られた花嫁(その33)

真夜中に家に帰ると、すぐに犯罪ネットを立ち上げた。

『夜9時半ごろに蒲田の辻本の家から出火し、住人のひとりが心肺停止で緊急搬送された』というニュースはすぐに見つかったが、MIKIのことは何もなかった。

そのまま夜を明かしたが、後追い報道もなく、MIKIからの連絡もなかった。

そろそろ寝ようと思ったところへ、やっとMIKIからメールが来た。

昨夜は警察で夜を明かしたが、今は蒲田駅前のビジネスホテルにいるとあった。

どんな経緯でホテルに泊まったのかたずねたが、返事はなかった。

おそらく、警察に出頭したのだろう。

これは寝てはいられないと思い、コーヒーマグを片手にネットニュースと犯罪ネットをぐるぐるサーフィンして新しいニュースを追いかけた。

夕方のニュース速報として、心肺停止で病院に搬送された辻本の死亡が確認されたと報じ、死因は窒息死とあって、暗に首吊り自殺をほのめかしていた。

辻本は、家に火を点けると同時に首でも吊ったのか?


翌日の夕方になって、

「今から蒲田で会えない?」

と、MIKIから、メールがあった。

警察からのお達しで、蒲田から離れられないというので、電車で蒲田へ向かった。

ビジネスホテルの狭い部屋に入るなり、

「容疑者あつかいなのよ。ひどくない?」

とMIKIは口を尖らせた。

何も聞かずに、冷蔵庫から缶コーヒーと缶ビールを取り出してテーブルに並べて置いたMIKIは、ソファーに座って高く足を組み、

「どう思う?」

とたずねた。

「どう思うって・・・。MIKIさん、辻本さんを殺したのですか?」

MIKIは、ひと口飲んだビール危うく噴き出しそうになりながら、

「警察みたいなこと言わないでよ」

と怒った顔をした。

「警察では、容疑者あつかいなんですか?」

「そうよ」

「でも、殺してない?」

「当り前よ。そりゃあ、いろいろトラブルはあった。でも、殺してない。・・・あれは自殺よ」

「そうなんですか?」

「いろいろと言い合いがあって、わたしが飛び出したあとに自殺したのよ」

「どんなトラブルだったのです?」

おおよその察しはついているが、いちおうたずねた・・・。

「これ以上ないほどご馳走をテーブルに並べてさ、『鍵も買い取ったし、これからは夫婦らしく暮らしていけるね』みたいなことをニヤニヤ笑いながら言うのよ。それで、爆発しちゃった」

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