第49話

「———と、いった形です。要点を纏めますと、序列八位漸騎士は死亡。彼の序列三位消失魔女を使用しての策はほぼ失敗していた。そういう事になります」


 言い終わり、席に着く。

 にわかにざわめき始める周りの反応に、深愛は鼻を鳴らした。


(くだらないですわね。《漸騎士》など、過去の強者。教えを貰っていた時の面影すら無い今のあの人に、東日本を落とせるだけの実力は伴っていないのですから)


「暴走さえも———」

「うまく発動しなかったと———」

「だが、報告を聞くと———」


 西日本大阪本部。機械化人間の能力者上位十二人———十二降天のみがこの場所に立ち入ることのできる場所、〝天下の礎〟。

 その円卓で、報告が行われていた。


 その席は人数分の十二の席が用意されていたが、三位と八位、そして一位の席が空席であることに深愛は首を傾げた。


「……おい、《神使徒》。ほぼ失敗していた、というのはどういうことだ?」

「どういうこと、と申しますと?」


 いまだ騒がしい円卓。隣に座る男が、深愛の返答に眉を寄せた。


「誤魔化すな。完全に失敗しているのならば、あんな言い方はしないだろ? 上位の老害共は《漸騎士》が消えたことで気づいてないみたいだが、俺は騙せない。……言え」

「我らが主———序列一位からの言葉であれば説明させていただきますが、何故貴方に命令されないといけないのです?」

「おい、てめェ! あまりふざけるなよ」


 挑発めいた———否。完全に挑発を仕掛けていた深愛に対し、反応があったのは彼の背後にいる部下であった。


「所詮、序列七位程度がァ! 我が主を何位だと思っている‼」

「さぁ? ところで、貴方は誰ですか?」

「俺はァ———」


 その言葉は最後まで刻まれない。

 炎が上がったかと見えた瞬間に、その男の首が飛んでいる。

 壊れた音と、首が落ちた音が同時に響いた。


「……なるほど。その攻撃、チカラ。どうやら七位のモノではないらしい。それがほぼ失敗であると気づいたカラクリの一つか? いつからだ?」

「……つい先ほど。どうやら、選ばれたらしいですので」


 証。

 赤色のメッシュが、彼女の白髪に混じって靡く。歩く後ろ姿は、艶やかに。


 その姿が扉の先に消えた後、円卓近くで問題に気付いた一人が慌てた声を上げるも、彼女にはもう聞こえていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る