第45話

「《将軍》! 現在の新潟ですが、当事者と連絡を取っているとの《明晰》からのご連絡報告書になります! ご指示を‼」

「あぁ、分かった」


 部下から差し出された三枚ほどの報告書を、一馬はパラパラとめくる。

 要点だけを簡潔に記した内容は、直接関われていない者であっても直ぐに理解できるレベルで纏め上げられていた。


「流石は《明晰》か。……全戦闘員に伝達! 一時前線を群馬まで後退させろ‼」

「は……はっ!」


 にわかに忙しくなる本部。

 新潟で起こっている戦闘は、東京本部にもしっかりと通じている。


 急遽漸騎士が東京側に進路を定めてきたかと思えば、突如として本人だけが新潟方面へ向かい、他戦力は撤退。

 これまでにただの一度も無かった西側の不気味な動きに警戒していた本部は、周囲の警戒に一層の重きを置かざるを得ず、新潟への支援がままならないでいた。


「そこのお前‼」

「はっ、はい!」


 一馬は端で書類をめくっている一人を呼び止めた。

 返事と共に、すぐさまその場で直立不動になって緊張感を前面に出している部下に、少し笑いがこみ上げた。


「今しがた承認が下りた〝神の雷〟を起動させろ。方角は新潟方面、標的ははた迷惑な災害だ。……そんなに緊張するな。務めをしっかり果たしてくれればそれで良い」

「はっ……は、はい‼」


 バタバタとかけていく後ろ姿を見送りながら、一馬は手元の通信機器をいじる。


 ワンコール、ツーコール。

 スリーコールに差し掛かるほんの少し前に、応答がある。


『俺だ。十五分後に〝雷〟を落とす。地点は送るから、誘導はお前に任せたぞ』

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