第44話
「———菊くん……‼」
「ぐ、う……!」
心臓を一突き———されていなかったのは、奇跡としか言えない。
変わらず意味不明な言葉を吐きながら、剣を横に薙ぎ払おうとする水見をなんとか蹴り飛ばす。
「eefyk4q@q@t@gih0ueud,d,shd,」
「何言ってんのか、わかんねぇんだよ……っ」
「———! ———、———‼」
狂ったかのように叫ぶ水見。
しかし、その姿はその面影を何処にも残していなかった。
整っていた金髪はどす黒い赤に染まり、顔の皮膚は爛れ始めている。無敵を誇る銀色の甲冑さえもくすみ、今にも崩れ落ちそうであった。
そして何より、彼をヘルヴォルとしてたらしめていたはずの金色の剣は消え失せ、禍々しい模様が入った暗黒の剣が、今の右手には握られている。
『暴走魔剣・ダーインスレイヴ。あの剣が満足するまで、所有者を暴れさせる呪いの権化だ。真名が真名、戦闘を求める意識に支配された今、攻撃はなんでも通るだろう』
———攻撃が当たればだが、と通信機器越しに汐里が沈んだ声音で入ってくる。
『無事かい、二人とも』
『大丈夫だよ、ウチも相棒もまだ動ける』
『俺はついさっき、胸を貫かれたところなんだけどね……』
愚痴をこぼしながらも、菊は〝存在証明力〟を枯渇させないように控えめに回復に充てる。
目の前では、地面に忙しなく剣を当てては叫ぶことを止めない水見———怪物がいる。
『ああも暴走されては動きが読めない。だからこそ、西側も東側の制圧が成されたタイミングで初めて動く気なんだろう。……覚悟はいいかい、二人とも。ここでアイツを始末出来なきゃ、このデータと同じ未来を東日本は辿ることになるよ』
『任せて、ウチと菊くんで何とかして見せる……!』
『とりあえず、また後でですね《明晰》。色々とお礼も言いたいですし』
『……待ってるよ、二人とも』
無駄話はせず、簡潔に話を終了させる。
怪物を相手に、今までのような余裕は無い。
現状として東日本よりも技術が進んでいる西日本側でさえ、操作を諦めている怪物。そんな災害を相手に、今からどうなるのかなど想像すらつかない。
それでも、東日本の《英雄》の相棒として。
そして、桜蓮との約束を守るため。
「ここで、終わらせるわけにはいかないんだよ……!」
「d@(4ib4wyfa《5o
空に雲がかかり、辺りが僅かに暗くなる。怪物の叫びと共に、第二幕は切られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます