第38話

「なんでって、当たり前じゃん。私はきっくーの守護霊だよ? それならいつでも干渉できるのは当たり前でしょ、interfere」

「理屈は分かるが、意味はわからん……! お前、大怪我してただろ、大丈夫なのか?」

「それも無用な心配だよ。意識だけこっち、きっくーに飛ばしてるだけだから、身体は向こうでちゃんと休まってる。それに、今は意識の中だから時間も関係なし! いつまでもお話しできる! ……まぁ、頭が疲れちゃうから時間は無いんだけど、regret」


 にへら、と笑うシストはいつもと同じ。

 それでも、目の奥では怒りの感情が浮かびつつあるのを、菊は感じた。


「……ごめん」

「何が悪かったか分かってないでしょ。理由が分からないのに謝るのは、ダメ男の典型的な癖だよ、将来にも響くからやめてね、stop」


 完全に言い当てられ、困ったように苦笑いを浮かべる菊。

 そんな姿をみて、シストもまた困ったようにため息をついた。


「あのね、何の為に私が出てきたか忘れたの? 〝存在証明力〟が足りないからなんだけど、こんな無茶な使い方したら消えるんだから。桜蓮との約束も果たせずにただ消えるだなんて、他の誰が許しても私が許さないんだけど、anger」

「う……」


 忘れていたわけでは無かった。

 それでも、この状況をひっくり返して次に繋げることに必死になるあまり疎かになっていたことは否めない。


「だから、この能力の使い方は絶対禁止。てか、私がもう許可を出さないから、使おうとしても効果が出ないからね。死にたくないなら、桜蓮を救いたいなら、別の可能性を模索するべき、understand?」

「……分かったよ」


 ———でも、どうやって?


 その思考に入ろうとした瞬間、菊の頭にノイズが大きく走る。


 何か、空間に罅が入ったかのような、嫌な感触。

 そしてそれは、この空間に居られる制限時間が迫っている知らせであることにまもなく気づいた。



「それはまた後で考えよう。今は、新しい作戦があるみたいだから、help」

「新しい、作戦? それって———」

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