10カウント

あう

1カウント

「別に緊張しなくたっていい、いつも通りを出せばいいだけだ。」そういったのは俺のコーチの西畑だ。西畑はいつもそう言うが俺は元から緊張はしていない。緊張しているのは西畑の方だ。

そう思いながら俺はリングに入る。左足から入るのが俺のルーティーンだ。

相手はかなりの猛者だ。名前は館山。

赤いグローブ、赤いヘッドギア、赤いマウスピース、こいつは赤一色だ。

試合のゴングが鳴る。

始まってからはすぐだ。俺の中では始まりがスタートでもありゴールでもある。

汗が飛びちる。俺はその汗に気を取られている間に相手からの左フックを貰っていた。

もつダウンしているみたいだ。西畑の声が聞こえる。俺は気がついたら西畑に介抱されていた。

試合の記憶はあまり残らない。

俺は館山にko 負けしたのようだ。

別に悔しさなんてものはない。

それは俺がこの試合に特別な思いがないからなのかもしれない。

本気で悔しがっているのは俺ではない西畑だ。

俺は悔しがっている西畑を見て自分を悔やんだ。 

俺は気がついたらサンドバッグを叩いていた。

横には西畑もいる。プロ選手である俺にずっと付いていてくれている。俺は西畑とミット打ちに移ろうとした時に倒れこんだ。

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10カウント あう @remit

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