134 腐ってる系はちょっと…
そんな説明をしてる所でドロップ品が出た。長方体の木箱二つに魔石一つだ。
木箱にはそれぞれ【ブルードラゴン肉】と【
「よしよし!シヴァの言ってた通り、ぶっ壊れ設定だな!」
エアはドロップ品たちをほくほくと収納にしまった。
ここのイレギュラーボスが三つ頭大雷魚なので、固定概念があったが、希望すればドラゴン肉でも出るということが証明された。何ドラゴンなのか、今度、指定してみよう。
それに、ドロップ数が変わらない所からして戦いに加わらなければ、同伴者はパーティとして認識されないようだ。
「ぶっ壊れって…あの、エアさん。大半の人たちなら、さっきのイレギュラーボスを倒すのにかなり苦労すると思うんですが…」
リミトがそんなツッコミを入れる。
「それにしたって、イレギュラーボスにしては弱い方で、なのに、
エラードロップは希望通りに何でも出るから、ぶっ壊れ設定とシヴァも評してるワケだ。ここのボスはかれこれ20回以上、検証してるけど」
「…はぁっ?」
「倒し方を変えず、かつ、限度があるのか、の検証もしてる。アカネさんもダンジョンエラーを狙って何度か倒してても、中々エラーにならなくて検証が出来ないそうだけど」
武器の扱いにかけては、六年冒険者キャリアがあって日々鍛錬と研鑽も重ねているエアには敵わなかった、ということだ。
「つまり、倒すこと自体は難しくない。ダンジョンエラーにするのが難しいだけで」
「ダンジョンエラーというのは、一体、何なんですか?」
リオンがそう質問した。
「そういや、説明してなかったか。そのまま。ダンジョンが想定していない倒し方をするとエラーになり、見た通りにすぐにドロップは出ない。で、その場合は規定のドロップじゃなく、エラードロップでドロップ数が増え、希望通りのドロップが出る。声に出さなくても思考を読むようだけどな」
「希望通りって本当に何でも出るんですか?」
「今の所はな。行きに影の中に出したマジックテントは、ここのドロップ。かなり豪華で家具や寝具、キッチン用品道具も込みだからドロップ二つ分だったけど」
よく使うマジックテントじゃない2LDKの方を出していた。リビングも広いので。
「え…Bさんに作ってもらったとかじゃなかったんですね…」
「エラードロップ品はそう思うぐらいケタ違いって話だな。エレナーダダンジョンのボスドロップでマジックテントが出たけど、それだってここのテント程豪華じゃないし。色々持ち込んでるから落ち着くし、そっちをメインで使ってるけど」
「…って、エアさん、エレナーダダンジョンも攻略してるんですね…」
「強い冒険者だとは聞いてましたが、そんなにいくつもダンジョン攻略してるとは思いませんでした。しかも、ソロで…」
「三つ。もう一つはニーベルングダンジョン。30階以降はアンデッドが多くなるから人気ないけど、経験したことがないならこの後、寄ってく?光の精霊獣のルーチェがいないうちに。いるとルーチェだけで無双して簡単過ぎるから」
「え、アンデッド、ですか?」
「腐ってる系はちょっと…」
「死体の始末をちゃんとしてないと、簡単にアンデッドになる。つい最近でもエレナーダの近くでアンデッド集団が発生してたしな。街中にいる限り、滅多に遭遇しないにしても、対処したことがないのはいざという時に困るぞ。実体がないレイスやゴーストは物理攻撃が効かないしな」
エアがそう言うと、リミトたちも考え直したようで承諾した。
本当にこういった機会は中々ないのだ。
冒険者をやってる限り、街の外に行くことも多いので、数年前、ぶっつけ本番でアンデッドに遭遇したエアたちは中々苦戦した。護衛依頼で商人たちを守らねばならなかったので尚更に。
移動前にビアラークの街の冒険者ギルドで、依頼の品の納品と達成処理をしてもらった。
その後、サーシェが影の中に入れるかどうかを試したが、やはり、恐怖心があるのか出来なかった。エアがサーシェだけを影に入れても、影魔法使いは外の様子が分かるからか、別に何でもなさそうなのに。サーシェ自身が自分を一番信用してないのかもしれない。
そして、アンデッドの基礎知識を確認してから、ニーベルングダンジョンへ影転移。浅層には用がないので、エアは皆を影の中に入れ、ダンジョンの転移魔法陣を使ってすぐに30階まで行く。
ニーベルングダンジョンはすべて洞窟タイプのダンジョンで、各階にセーフティルームがある。
そこで装備を改めて整えてから、いざ、探索。
リオンとマシューにはまだ早いので、精霊獣たちを護衛に付けて弱らせてからトドメを刺すだけにしたが、リミトとサーシェは十分に戦えるので応援しておいた。一応、バロンについていてもらう。
エアはみんなのフォローだ。
アンデッドにダメージを与える魔法は光魔法、回復魔法、火魔法。
火魔法は全員使えるので、火魔法と物理攻撃で倒して行く。
一応、光魔法でもあるライトも多少はダメージを与えるが、本当に多少なのでほんの少しの足止め程度にしか役に立たなかった。
攻撃の光魔法、ライトボールやライトアローのような攻撃が出来れば、大ダメージを与えるが、光魔法は生活魔法のライト以上の適性がある人の方が少ない。
「こらこら、もうちょっと引き付けろって。効率も悪いし、魔力も無駄遣い」
まだまだ続々とアンデッドが向かって来るのに、さっさと魔法で攻撃してしまうので敵の数の把握も出来ないし、攻撃ダメージも微妙なことになっている。
「実体があるアンデッドは物理攻撃、ないのは魔法。よく見ろ。実体のあるアンデッドは動きが鈍いんだから十分対処出来るぞ」
でろでろだったり、ぼろぼろだったりするのが気持ち悪かったり、怖かったりするので慌ててしまうのだろうが、慣れて行かないと、いざという時に困るのは自分だ。
分かっているのでリミトもサーシェも神妙に頷き、エアのアドバイス通り、引き付けてから攻撃するようになった。今年十三歳の二人だが、年齢の割には小柄でリーチがないので、獲物は槍を使っている。
セオリー通りにまずは足、続いて首、まだ動くなら魔石を狙う。
スケルトンだと胸骨の間から魔石が見えてたりするが、ダンジョン以外で砕いてしまうと稼ぎがなくなるので倒し方を考えないとならない。まぁ、ダンジョン以外でスケルトンに遭遇することは滅多にないが。
最初はぎこちなかったものの、進むにつれ、徐々に慣れて来た。
しかし、さほどレベルが高くないリオンとマシューにはキツイので、適当な所で影の中のマジックテント内で休憩させた。
リミトとサーシェも一フロア進める程には、魔力が保たなかったので、やはり、影の中のマジックテントに入れて休憩にした。
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新作☆「番外編63 黒鷹獅子は高みを目指す!」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093084867975468
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