133 ちょっと人間やめてませんか…

「…っていうか、エアさん、強過ぎなんですが……」


「…話に聞く高速戦闘、だったんですか?」


「…見えませんでした…気付いたらバラバラでした…」


「…ドロップにならないんですけど…」


「それがダンジョンエラー。十五分ぐらいでドロップが出て来る。別に高速戦闘じゃない。高速戦闘だとさっきの十倍ぐらい速さが違う」


「………エアさん、ちょっと人間やめてませんか…」


「やめてないって。もっと深層にも行ったから鍛えられただけ。ハード過ぎだったから色んな属性の精霊獣を召喚したワケだ。結界ぐらい容易く突破して来る魔物ばっかりだから、さすがに安全には見学させてやれないけど」


「結界を突破…」


「え、それでどうやって攻略したんですか?休憩も出来ませんよね?」


「影の中に入って。外の影響をまったく受けないし、もし、シャドー種だとしてもレベルが上の人には干渉出来ない。バロンも無理」


 そもそも、影魔法を使えても、どの影の中にいるのかの探知が難しいのだ。レベルの高くないシャドー種だと魔力の痕跡が残っているので簡単なのだが。


「そんな使い方が出来るんですか。…って、じゃあ、わたしも練習したら影の中に入れるようになるってことです?影収納をスクロールで覚えたんですが、その時、説明冊子もBさんにもらって、そこに熟練度を上げて理解も深めたら他の影魔法も覚えるって書いてあったんですが」


 サーシェがそんな質問をして来た。


「その通り。サーシェはいつ覚えた?半年ぐらい前なら…」


 エアの報告書の内容も入ってるだろう。


「いえ、一年以上経ってます。収納容量は増えたんですが、他の影魔法は全然覚えなくて。あ、影収納を落とし穴みたいに使うことは出来ます。膝までぐらいの深さですが」


「なら、影収納の大きさを広げて自分が入るだけだぞ?影収納の容量を限定する方が難しいと思うんだけど、概念がよく分かってないのか、恐怖心があるのか。おれもニキータもバロンもいるんだから、魔石ランプを持って入ってみたら?足元に影はいつでも出来るし、手で作った影だっていい」


「荷物をしまうように入るだけなんですか?」


「他にどうしろと?ここに来る時もおれの影に入っただろ。別に怖い場所じゃない。誰かと一緒がいいなら連れて入れば?」


「おれは遠慮」


「おれもちょっと」


「ぼくはいいよ?」


 一番にリミトが断り、マシューも遠慮し、リオンは承諾した。この態度の違いはサーシェの信用度なのか。


「ううん。万が一を考えて、ここは影魔法が使えるエアさんに頼みたいんですが、いいですか?」


「いいけど、ドロップが出てからな。倒した本人がいる必要があるだろうから」


「あ、はい。もちろんです。それにしても、影収納を覚えた時期って何か関係があったんですか?」


「半年ぐらい前ならおれの報告書の内容も、その冊子に入ってただろうから。色々モニターやってるんで。このエラードロップ検証もな。影魔法キャリアで言えば、サーシェの方が上。おれが覚えたのは半年ぐらい前だ」


「…あの、エアさん。影転移のスクロールか魔導書をもらったんですか?」


「いや、影収納だけ。義手が影属性で、そこに影収納が仕込んであるから覚えたというのもちょっと違うけど、影転移は影に潜れるようになった後に練習して出来るようになった。義手もらって一ヶ月半ぐらい後に」


「……ええっ?たった一ヶ月半で?エアさん、才能があったってことですよね?」


 言葉の意味が一瞬分からなかったようで、サーシェの反応は少し遅れたが、驚いていた。


「それもあるだろうけど、どういった魔法なのか、理解するのも大事だな。影転移は影に潜って、潜った影とは違う影から出る、簡単に言えばそれだけだ」


「…簡単過ぎて分からないです…」


「影収納はマジックバッグのように持ち運べるだろ?それは影収納が使える本人にくっついてるということだ。だから、どこに移動しても影収納から出せる。でも、その出入り口になった影は入った影とは違うんだよ。影収納とは言ってるけど、厳密には別次元で…」


 …とエアは紙を出して図解してみた。エアが理解していることなので、シヴァが作った冊子の内容とはまた違うイメージかもしれない。


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