132 変態は死ぬべき!
エアたちは5階まで行った所でお昼にすることにした。
リミトとサーシェも通信イヤーカフを使って呼び戻す。シャドーパンサーのバロンが同行しているので影転移ですぐ戻れるのだ。
5階ごとにある転移魔法陣で外に出て、美味しい食堂に行く。
作ってもよかったが、環境的に外食は中々出来ない従業員たちだし、食材豊富なダンジョンの側なので料理も色々と工夫されていて美味しいのだ。
ダンジョンを中心に発展して来たビアラークの街なので、どこも従魔も入れるが、体長2.5mはあるそのままのサイズだと大きいのでバロンは【幼獣化】スキルを使って猫サイズに小さくなった。バロンは豹なので丸い耳が顔の横になる。可愛い!
大人一人子供四人、猫型精霊獣が五体と従魔一匹で六人席はスペース的にはまったく問題なかったが、猫好きには羨望の的だった……。
「な、撫でさせてもらえない、かな?」
「却下」
手をわきわきさせながら言う男は気持ち悪いので。
「って、リオンの方かよ!」
猫好きに少年好きが混じっていた…。
リオンの頭に伸ばす手をエアが手で軽くはたいてそらす。
ショートソードを抜き、その刃先をスッと男の首に突き付けたのはサーシェだった。
「触ったら殺す」
サーシェの本気の殺気を浴びて、少年好き男は転びそうになりながら慌てて食堂を出て行った。
ヤバイと思ったのか、猫好き連中も逃げて行く。サーシェはすぐにショートソードを鞘にしまった。
「サーシェさぁ、本気過ぎない?」
相棒たるリミトが少々引きつつ、ツッコミを入れた。
「変態は死ぬべき!」
「それは同感だけど、不用意に抜くと反撃されるぞ」
エアは注意しておいた。
エアと精霊獣たちはともかく、サーシェはバロンやリミトたちをアテにしていたのだろうが、いつも一緒というワケでもないのでそういった姿勢はよくない。
「はい、今後は気を付けます」
「あ、ありがとう。サーシェ」
何があったの?としばし呆然としていたリオンだが、自分がヤバかったのかと気付いたリオンがお礼を言う。
「エアさんが先に阻止してたよ。頭を撫でようとした手を」
サーシェはちゃんと見えていたらしい。
「あ、エアさんもありがとうございました」
「どういたしまして」
「それにしても、サーシェ、何で変態?」
マシューがその辺が気になったらしい。
「知らない子供の頭を触りたがるなんて、変態しかいない!」
「人さらいかもしれないよ?魔法をかけるとか薬を飲ませるとか」
リミトが可能性を挙げた。
「それもそっか。じゃ、変態か悪い人しかいない!」
確かに。
結論が出た所で、心置きなく食事に戻る。
精霊獣だと分かっていて触りたがっていた連中も引いたので、快適だった。
食事はエアが奢り、その後、冒険者ギルドで依頼納品と達成報告。
まったく難しくない依頼だったので、リミトとサーシェも楽々達成していた。
******
この後、街を散策するか、ダンジョンの下層体験するかを選ばせたら後者を選んだので、エアは21階に連れて行くことにした。
影の中に入れて転移魔法陣を使えば、『到達した階までしか行けない』というダンジョンルールにひっかからないのだ。
裏技である。
21階は森林と湖のフィールドフロア。
Dランクのリミトとサーシェには手に余るので、精霊獣たちのサポートを付け、リオンとマシューは見学。エアと精霊獣たちが囲み、魔物を近付けさせない。
どうせなら検証しよう、といつもの大きな湖まで行き、他の皆には結界の中で見学してもらってから、エアだけでイレギュラーボス
すかさず【鑑定モノクル】を装備してエラーを確認。
「美味しいドラゴンの肉がたくさん欲しい!それと大雷魚の肉もたっぷりと!」
そして、叫ぶ。
別にパーティを組んでいるワケではないが、他の人たちを連れて来て、エア一人で倒した場合、どうなるのか?…という検証である。
ドロップ数が減るか、そのままか。
大きいテーブルを出して、皆も座らせて待機したが、口は開けっ放しだった。何をやるのか説明してないのもあるだろうが、速い動き過ぎてエアが何をやったのかもよく分からなかったのだろう。
……あれ?精霊獣たちはエアの動きが見えてたハズだし、前回もエラー検証を見ているのだが、一緒に驚いてる……。
「んん?精霊獣たちは見たことあるだろ?ダンジョンエラーの検証だって。ほら、ニーベルングダンジョンのボス、ラウンドボーンドラゴンでもやっただろ。さっきのはこの湖の主でイレギュラーボスだから。…え、覚えてるけど、今回も驚いたって?」
精霊獣たち五体にコクコクと勢いよく頷かれた。
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