第6話 愕然の今
得体が知れない。
何の事を言っているんだ、と思っているかも知れないが.....目の前の雪の事だ。
得体が知れないとはつまり何を考えているかも分からない、と言える。
俺はそうふと頭の中で想像しながら雪を見る。
目の前の勉強をしている雪を。
俺達は勉強する事にしたのであるが。
「.....ん?どうしたの?」
「ああ。いや。何でもない。.....すまないな。じっと見て」
「いや?大丈夫だけど.....」
「そうか。有難う」
お茶を飲む雪。
それからまた勉強を.....と思ったら。
俺の方を見ながらニコニコしてきた。
そして、幸せだな、と言いながら笑顔になる。
「.....こうして鍋ちゃんも居るしね」
「ああ。まあ俺もお前が居るから」
「鍋ちゃんも幸せなんだ。良かった」
「.....」
まあ半分は不幸かも知れないけど。
今はそう振る舞っておこう。
思いながら俺は雪を見る。
すると雪は、ちょっとトイレに行ってくるね、と言い出して席を立った。
俺はその言葉に、分かった、と返事をしながら勉強をする。
するとスマホにメッセージが入ってきた。
そのメッセージにはこう書かれている。
冴島なのだが、もしかして田中さんが来てます?、と。
それに、まあ来ているな、と返事をする。
冴島は、それは良い機会ですね。取り敢えずは揺さぶりでもかけてみたらどうでしょうか、と笑顔の様なメッセージをくれる。
汗を少しだけかく。
(揺さぶり?)
(そうですね。具体的には.....ショッピングセンターの話をしてみるとか)
(ああ.....成程な)
(はい。取り敢えず揺さぶってから何か情報を収集しましょう)
その言葉に沸々と怒りが再燃する。
俺はスマホを仕舞ってから待ってみると直ぐに雪が帰って来た。
それから俺の顔を見ながら、お待たせ、と言ってくる。
その様子に、ああ、と返事をする俺。
「?.....どうしたの?顔が赤いけど」
「いや。何でもない。.....そうだ。ちょっと話をしないか」
「え?何の話?鍋ちゃん」
「.....近所に出来たショッピングモールの話、とかかな」
すると明らかな動揺が雪に見られた。
汗を少しだけかく雪。
俺はその姿を見ながら見てないふりをしてから、何だか近所のショッピングモールの中に色々出来始めているんだって。今度行ってみないか、と提案をする。
そうすると雪は、.....だね、と困惑しながら返事をした。
「ん?もしかして嫌か?」
「え?.....あ、い、嫌じゃないけど」
「じゃあ行ってみないか?俺は行ってみたいから」
「そうだね。じゃあ行こうか」
諦めた様な反応をする雪。
それから雪は座布団に腰掛けた。
そして勉強を再開する。
時計の針の音がする中.....俺達はひたすらに勉強をする。
「そろそろ休憩するか」
「あ、だね.....」
「どうしたんだお前。結構.....落ち込んでないか」
「い、いや。どうもしてない」
それから顔を上げて笑顔を見せる雪。
俺はそんな顔に、そうか?、と答える。
雪の奴はマジに浮気しているんだろうな。
そう考えてしまうが。
「ショッピングモール楽しみだね。今度行くの」
「.....そうだな。俺もとても楽しみだ」
するとスマホが鳴った。
それから見てみると、浮気した相手様の行き先が分かった気がします、と言葉を記載してあった。
俺は!?と思いながら、それはどういう事だ、と尋ねると。
私の知り合いが勤めている〇〇雑貨屋がある場所。
そこに雪に似た娘が親しげな男連れで来た、と。
あまりの絶望だった。
「.....」
「どうしたの?誰とメッセージしているの?」
「何でもない。.....母親とメッセージしていた」
そんな言葉を言いながらも。
あまりの怒りに手が震えてしまう。
俺は唇を噛んでから、落ち着け、と言い聞かせてから顔を上げる。
それから雪に笑顔を見せる。
「.....そうだ。〇〇雑貨屋に行こうか。.....ショッピングセンターの。お前好きだろ」
「.....え.....」
「どうした?」
「.....い、いや.....」
雪は予想外の言葉だったのだろう。
少しだけ動揺した。
そして眉を少しだけ顰める。
間違いなく追い詰められてきている。
思いながら俺は笑みを浮かべながら心配そうな感じの演技をする。
それから、雪。調子が悪いのか、と意地悪をしてみる。
「え!?そ、そんな事ないよ?調子はいつも通りだけど」
「.....そうか。何か調子が悪くなったら言えよ?」
「私はいつもこんな顔だから.....うん」
雪は動揺の心を抑え込んでいる様だ。
こうなった以上は徹底的に追い詰めてやる。
思いながら俺は絶望で再燃する暗黒の心を抱きつつ雪を見る。
それからまた口角を上げた。
空が黒く染まったので浮気した彼女に復讐する事にしました。 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou
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