第5話 雪という人間

家に帰って来た。

それから俺は家の中を見渡す。

親は実は親父の方が海外に赴任している。


母親は家に居るが出張が多い。

つまりこの家には大体1人しかいない。

なので俺は自由にやっている。

たまに母親は家に帰っては来るが俺に任せられている。


「.....」


そんな俺の寂しさを埋めてくれる存在が雪だった。

なので.....まあ悲しかったし悔しかったのだ。

その為に復讐をする事にした。

俺は絶対に許せない。

そう思ったから。


「はぁ」


溜息を吐きながら勉強をする。

するとスマホにメッセージが入った。

それは雪である。

俺は!と思いながらその文章を読む。

そこにはこう書かれていた。


(さっき悪い事をしたかな。.....何だか鍋ちゃんの反応がイマイチだったから)

(ああ.....いや。そんな事はない。すまないな)

(そう?だったら良いんだけど.....)


雪はそう書いてくる。

そして、私、今勉強しているんだけど.....鍋ちゃんは?、と聞いてくる。

俺はその言葉に、俺も勉強はしている、と答えた。

すると。


(そうなんだ。じゃあ頭の良い鍋ちゃんに今から教えてもらいに行こうかな)


とメッセージがあった。

俺はその言葉にまた!と浮かべる。

それから俺に笑みを浮かべる様にスタンプを送ってきた。

そんな絵文字に少しだけ眉を顰めたが。


(いいぞ)


と返事をしてしまった。

今の複雑な状況でよくこんな言葉が出たもんだ。

我ながら自らを感心しながらそのまま、じゃあ今から集まるか、と聞く。


すると雪は、私ね。今、鍋ちゃんの家の前に居るよ、と答えてくる。

俺は!?と思いながら玄関に慌てて行く。

そしてガチャッとドアをそのまま開けると目の前に雪が居た。

やっほー、的な感じをしている。


「雪.....」

「来ちゃった。.....何たって彼氏だからね」

「まあそうだな」

「?.....どうしたの?深刻そうな顔をして」

「ああ。いや。ちょっと色々あってな」


そんな感じで返答をしながら俺は雪を見る。

雪は俺を見つつ?を浮かべていたが。

まあ良いや、と言い出してから、上がって良いかな、と聞いてくる。

俺はその言葉に、ああ、と返事をしながらそのまま踵を返す。


「いやー。やっぱり落ち着くね。鍋ちゃんの自宅」

「そうか?俺の自宅には何もないぞ。つまらない」

「そんな事はないよ。それは幾ら何でも言い過ぎ。私は落ち着くって思うから。一人って良いじゃない?」

「.....」


ニコッとしてくる雪。

俺はその言葉に少しだけイラッとしながらも。

そのまま沈黙してから前を見る。

そして部屋の中に連れて来た。

すると雪は、ケーキ買ってきた!、と笑顔になる。


「ケーキを買ったのか?そんなものにお金使うなよ」

「まあまあ。そんな事言わないで?楽しい事にはパアッと使うべきだと思うから」

「そうだな.....まあ確かにな」

「鍋ちゃん」


厳しい感じで返事をするなり雪はそう言いながら俺をジッと見てくる。

俺はビクッとしながらその姿を見る。

雪は俺を見ながら、悩み事があるの?、と聞いてきた。

その言葉に俺はまたイラッとする。

誰のせいだと思っているのか。


「まあ試験勉強とか色々あるからな.....」

「あ。そうなんだね。成程だねぇ」

「だから色々と悩んでいるんだろうな。きっと」

「そうだね.....確かに悩むよね。.....だって勉強難しいからね」


そうだな、と返事をしながら俺は雪を見る。

その中で雪は、そうなると落ち着くイメージのハーブティーを用意しようか、と満面の笑顔になる雪。

俺はその姿を見ながらまたイラッとしながらも、まあそうだな、とそんな曖昧な言葉をまたも口にする。


「取り敢えずは落ち着くものが今直ぐに飲みたい気はするな」

「落ち着くもの?良いねぇ。それで美味しいハーブティーならもっと良いよね」

「そうだな。.....取り敢えずは美味しい落ち着く様な気持ちになれるハーブティーが良いかもな」

「だねぇ」


そんな会話をしながら俺達は顔を見合わせる。

俺はそんな顔に、お前が淹れるか?、と聞いてみる。

すると雪は、そうだね、と柔和になる。

それからまた笑みを浮かべる。

少しだけ頬を朱に染めながら、であるが。


「やっぱりこういう時の時間が一番楽しいよ」

「そうなのか?」

「うん。私にとってはね。今がとても嬉しい時間だし楽しい時間だね」

「.....」


俺はその言葉に顎に手を添えて眉を顰める。

それから雪を見た。

雪は笑顔のまま俺を見ている。

そんな姿に俺はまた何かを感じて横を見る。

耐えろ。耐えるんだ。


正直言って浮気したのか、と聞きたくなる、が。

今はグッと取り敢えずは堪えよう。

全てを侵食するって言ったしなアイツ。

計画が立ち上がって出来上がるまでは堪えようと思う。

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