凄惨ないじめを受け、転移先でも追放。キレたのでめちゃくちゃ強くなって復讐します!

@Shititentaiki

第1話


「助けてくれぇぇえええ……!!……あれ? 夢か……」


 朝だ。憂鬱な朝がやってきた。悪夢を見るのはいつもの事だし、気分の良い朝を体験したのは、何年前だったかすら覚えていない。

 けたたましい音を立てて鳴り響くアラームを止め、僕は、ベットから体を起こす。


「痛……」


 ストレス性のものだろうか、慢性的な腹痛と全身を蝕む鈍痛をぐっと堪え、洗面所に向かう。そして、鏡の前に立つ自分の姿を見て深いため息を吐いた。

 ボサボサの、白髪混じりの頭髪に、痩せこけた頬。曲がった背筋と枯れ木のような体つき。お世辞にも整っているとは言えない顔には、ニキビやホクロ、イボが目立つ。そして、僕の恵まれなさは、そう言った表面的なものだけでなく、運動や勉強にまで及んでいた。何をやってもうまく行かない。人よりも倍は努力しているはずなのに、成果はいつも人並み以下。もはや、呪われた体と言っても過言ではなかった。自分が人間ではなく、人間の一つ下の劣等種と言われても、納得ができる。


「学校……行かなきゃ」


 支度を適当に済ませたあと、鏡に写った醜い化け物を尻目に、僕は洗面を後にする。リビングには、カロリーバイトが四本置かれていて、その内の二本を水と共に飲み干し、家を出た。幸いなことに、かなり早めに出たお陰か、僕をいじめてくる陽キャ集団には出くわさずに済みそうだった。


「ふ、ふぅ。よかった」


安心した僕は、通学路を少し外れた道をゆっくりと歩いていく。僕をいじめる人達が、どこにいるかも分からない。それに、学校は家から近い距離にある。外にいる時は、こうしてビクビクしながら過ごしている。だから、普段は極力家にこもっているのだ。


「あと少し……」


学校に近づくにつれ、胃がキリキリと痛み始める。いつものことなので、無視して無理やりに歩いていき、門から校舎の中へと入る。

 今日は珍しいことに、下駄箱に入った上履きには何もいたずらされていなかった。

 だが、それが返って不吉であり、僕の心臓は、ドクドクと嫌な音を立て始めた。


階段を上がって、教室に入ると、そこには、以前仲良くしていた陰キャグループ五人と、数名の陽キャがいた。


「よ、よお! 雨下! 相変わらず気持ちの悪い見た目してるなぁ!」

「き、気持ち悪いんだよ! 一生下見て歩いとけ!」

「お、おはよう。みんな」


 見ると、ニヤニヤと、貼り付けたような無理やりの笑みを浮かべてこちらを罵倒してくる陰キャグループのメンバーと、その後ろで満面の笑みを浮かべる陽キャ二人がいた。


 この状況を見て、何が起こっているのか分からないほど僕は鈍感じゃない。陽キャに監視された陰キャグループが、以前僕と仲良くしていたことを引け目に感じて、自分たちまで陽キャ集団に狙われないように、保身に走って僕を罵倒したのだ。


 僕は自分の席に着くと、ボロボロのカバンから、ボロボロの教科書を机の中に入れていると、僕の机を囲むようにして、陰キャグループ五人が立ちはだかる。


「死ねよ! ブス!」

「だっせぇ体つき! 俺でも折れそうなもやし体型だな!」

「そのイボだらけの顔なんだよ! お前みてぇは醜い化け物、見たことねぇよ!」

「勉強も運動も、その他諸々何やってもお前はドベ! 生きてる価値ねぇよ!」

「このクラスでお前がいなくなったところで、いや、どこに行っても、お前がいなくなっても誰も悲しまねぇよ!」


 クラスカースト底辺で、何かと日頃から鬱憤を貯めている彼らは、次第に僕を罵倒するのが楽しくなってきたのか、ヒートアップしていく。その度に、僕の胃はキリキリと痛み、自分が生きてていいのか分からなくなる。そうして一頻り馬鹿にされると、陰キャグループは去っていき、徐々に人が教室に集まり始める。先程の陽キャ二人組は、その出来事を事細かに脚色して仲間に話し始め、教室は爆笑の渦と化した。


「おーい。ブツブツ妖怪くん」


すると、陽キャ集団の中でも、トップのクラスカーストを誇る、イケメンの岸田恭弥君が、近づいてくる。ブツブツ妖怪とは、僕の顔のイボやホクロ、その他諸々の気持ち悪さから付けられた蔑称だ。


「な、何かな?」

「いちいちとぼけんなよキモイなぁ。今日も昼休みに屋上でリンチされたくなかったら、焼きそばパン六個と、飲み物五本買ってこいよ」

「わ、分かった」

「来なかったら、殺すからな?」


そう言って、陽キャ集団の元へと戻っていく岸田君。どうせ、行ったところでリンチされるのは決まっている。ただ、無視した場合もっと酷いことが待っているので、僕は従っている。


 それから、授業で教師から嫌がらせの連続指名をされ、間違えて教室中が笑う、といういつもの流れに胃を痛ませ、昼休みがやってきた。僕は、誰よりも先に教室を出て、購買に向かった。そして指定されたものを全て買い、屋上へと走る。


「あれ、おかしいな」


そうして十分ほど待つも、誰も来ない。おかしいと思い教室に戻ろうとすると、階段から登ってくる岸田君の姿が。


「おい、ブツブツ。今日は教室って言ったろうが!!」

「え? そんな……。いえ、すみませんでした!」


僕が平服すると、岸田くんは笑みを浮かべながら、こう言った。


「今日はうんこ三連発の刑な」

「ッ……」


僕は為す術なく、岸田くんに耳たぶを引っ張られながら、陽キャグループが待つ男子トイレに連れてこられた。


「今日のうんこは、陰キャくん達がした出来たてうんこ〜!」


僕は、個室から漂うその匂いだけで、トラウマを刺激されて吐きそうになる。


「口開けて横になれ」

「ぃ、ぃやだ」

「ァア!? なんか言ったかブツブツ!」

「な、なんでもないです」

「こいつ、泣いてやがる! ウケる! 女も呼んでこい!」


そうして、男女問わず陽キャグループと、糞をした陰キャグループが全員男子トイレに集まるという、異様な光景が出来上がる。


「じゃあ、このトングを使って、陰キャくん達のうんこを、ブツブツの口に入れま〜す」

「嫌だ、オェー、絶対無理だって!」

「おい、取り抑えろ! 暴れさせんじゃねぇ!」

「岸田! さっき教室で温めておいたヘアアイロンあるよ! これで黙らせればいいんじゃない?」

「おお! ナイスな案だぜ! 美月!」


陽キャ女子の一人から、ヘアアイロンを受け取った岸田は、それで容赦なく僕の腕を熱する。


「うあああああ! 熱い!」

「やられたくなかったら、大人しくうんこの刑だ!」


僕は、あまりの熱さに観念し、口を開ける。


「ようやく大人しくなったぜ! そんじゃ、入れま〜す。陰キャくんたち、何か言うことないの?」

「ひぇ……えっと、くたばれ! 雨下!」

「アッハッハッハッハッ! そんじゃ、入れま〜す」


僕は、グッと堪え、口の中を開く。そして、落とされたぶつが、口の中で溶けだす。


「お、オェ……」

「食えよ! 熱するぞ!」


ゴクリ。なんとか飲み干した僕は、これがあと三回続くことに目眩を覚える。


「あと二個は、陰キャくん達にやってもらおうかな〜」

「お、俺たちは別に……」

「じゃあ、君たちが代わりに食うってこと〜?」

「いや、やります!!」

「じゃ、動画撮るからよろしく〜」


陰キャ達は、互いに擦り付けたあと、結局ジャンケンで負けた二人がやることになった。


「ひ、ひひ……」

「ほ、ほら! 食え! 雨下!」

「グォエ……」


陰キャグループの、赤座にトングごと強引に口に突っ込まれる。吐き出しそうになるが、再びヘアアイロンで腕を熱され、強引に飲み込む。


「頑張れ〜ブツブツく〜ん」


陽キャ女子の遠藤さんに言われ、僕はあと一個あることを思い出し、全部吐き出しそうになる。だが、ヘアアイロンが待っていることを考え、グッと堪える。


「ラスト一個〜」


陰キャの緑川が、トングでうんこを持とうとして、腕が震えて落とす。


「あ〜あ〜。何やってんだよ!」

「す、すみません!」

「こうなったら、ブツブツ、自分で食え」

「ぅぅ……」


先程は強引に食わされたが、自分から食べることを強要されるのは、違った苦痛があった。

 地面に落ちたうんこに目を向けると、若干固まったようなうんこが一つ。僕は、意を決して、それを食べる。


「床にまだこびりついてんだろ! 舐めろ!」

「はぃ……」


僕は、嗚咽を漏らしながら、床を舐めとる。


そうして、いつもより少しだけ過酷ないじめが終わると、トイレに集まっていた人達は、一斉に去っていった。


それを確認した僕は、トイレの便器に手を付け、思い切り嘔吐する。


「ゲェェェェエエエ」


朝食べたカロリーバイトを含め、胃液まで、胃の中のもの全てを吐き出すと、僕は、口をトイレでゆすぎ、教室へ戻った。


「あいつ、さっきうんこ食わされたらしいよ」

「は? さすがに冗談だろ」


教室は、僕のさっきのいじめを信じるものと信じないものに分かれていた。だが、その全員が、その真偽についてはどうでもよく思っていた。彼らの認識は、汚らしい見た目のやつが、汚いことをしただけ。それくらいに思ってるだろう。

 そんな中、僕に対して人一倍当たりの強い体育教師が入ってくる。今日は保健体育の日だ。先程のこともあって、今日も授業に集中できそうになさそうだ。そんなことを考えていたその時。


「な、なんだこれ!?」


教室の壁、床、天井に、魔法陣のようなものが現れ、辺りが光に包まれる。次の瞬間、僕は意識を失った。

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