罪人男女と桃色の魔女

──空間内に悲鳴が轟く。それは始めは嬌声の様に高く、やがて身を引き千切られそうな苦痛の形に変わった。

「痛え…痛え…痛え…痛え…痛え……」

「痛いいたいいタイよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

明確に苦痛を訴えるが、まだ誰も助けには来ない。

──こんな時、炉景ロケイHONEYハニーの二人が居ればまだ安心出来たかもしれない。痛みに潰される思考野がほんの僅かな隙に考えたが、居ればきっとあの二人も同じ状態に苦しむ事になったかもしれない、と答えを出して、オクタの思考は苦痛に完全に屈した。


思い出すべきじゃなかった、──いや思い出したくなかった、自分と彼等の『罪』を思い出して、それでもオクタは己の正当性と『それ』に対する否定を繰り返す。

(俺は悪くない…俺は何も悪くない……)

悪いのは全部『あいつ』だ。

自分のした事も言った事も全て正論だし正義に基づいているんだ、と彼は自分自身と愛する方ミイヌ、そして仲間達の弁護に務めていた。

…まるで突き付けてくる『何か』に怯えながら勇敢に喰い付く勇者の様に。
















「──…あれー?オクトンとミヌヌンじゃないですかぁ。どうしてこんなところに」



苦痛に苛まれている二人の前に現れ、揺らぐ意識の中をスッと入り込んだ知っている声の存在。






──シュシュ。世界を殺した魔女。




「うーん?二人がこんなところにいるなんて……というかここって、どこかしら」

顎に手を添えて思考する表情を浮かべて、辺りを訝しげに見回す。

その振る舞いがあまりにも仰々しく、どう考えても様子以外の何ものでもなかったが、彼女はその大袈裟な態度でしらを切る。



「大丈夫ですか~?」

シュシュは目の前へ来るやその場でしゃがみ、何の躊躇いも持たずに手を差し伸べる。勿論、差し伸べられた手をオクタも水狗ミイヌも取らない筈が無かった。






「さて…と」

シュシュが二人を椅子に座らせ、そしてへ視線を送る。

「…ああ、見ちゃったんですね。……思い出しちゃいましたか」

その言葉と同時にシュシュは嘆息し、

と憐れみを漏らした。

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禍根の根 Mitron @xx_fae

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