男と女
「──な…んだよ、こ……う、っ…ゔェ゙、」
脳内で再生された『光景』にオクタは脳を掻き回された様な酷い感覚を覚え、その場に吐瀉物を散乱させる。
「おっくん、お……ゥ゙、え゙…うゴ、おぶェええエ゙えェッ」
同じ状態であった
水狗の方が割と深刻だったのか、嘔吐しながら遂に倒れ伏せてしまった。
「ゔ…ぇ……ミヌ…ちゃん……
オクタが真っ青な顔で倒れて苦しむ彼女を見つめる。焦点が揺らぎ明瞭に捉える事もやっとだ。
そんな状態の中で、オクタは『光景』の考察を始めるが、酷い感覚は彼の思考を阻害する。
──殺した?何故俺が?俺達が?
──知らない。俺はこんな事、知らない。
──俺が『ヒト殺し』?そんな筈はない。俺は何もやってない!
男の頭の中は、まだ混乱している。
苦しむ中、『光景』をゆっくりと思い出そうとするが、感覚に阻まれて上手くいかない。
──でも、確かにミヌちゃんが、ロキ君が、ハニハニがあの場にいた。
最初から、俺と一緒に…シュシュちゃんが、いた……
目覚めてから記憶の中にどっと溢れていたのは、SNSで皆と戯れていた『過去』の方。
その中に存在していなかった、『殺害』の記憶。
──何故だ?俺はそんな事していないのに。ミヌちゃんに恋して、愛し合って、繋がった事、オクタフレンズのみんなが祝福してくれた事、そん中でロキ君が別のSNSへ移ると話してくれた事、でもゲームの中ではみんな一緒になれた事。
なのに、一つだけ付いた一点の黒色が、染みの様に少しずつ広がってゆく。或いは、突然現れた、噛み合わない歯車。
何処にも噛み合わない歯車の存在が、全体を崩してゆく状態。
黒色、または歯車。ノイズの嵐に阻まれながら、男の中で今一度正しく修復されてつつある記憶と構造が全ての系列と一致した瞬間、思考するオクタも、悶え苦しむ水狗も、まるで嬌声の様に高い悲鳴を上げ始めた。
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