真相_Ⅷ
「オクタ氏ー」
「オクトンー!ミヌヌンー!シュシュちゃーん!!」
遠くの方から
「あ♪ロキさんとハニさぁーん♡」
二人に真っ先に気付いたシュシュが手を振って喜ばしく受け入れる。
「大丈夫かー」
炉景はその言葉を三人…いや、オクタへ向けているが、肝心の彼は硬直している様だった。
「ハニざあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ん゙!」
瞬間。
見慣れた顔に最も素早く安堵し涙と鼻水でぐちゃぐちゃの表情と共に突っ込んできたのは
「ミヌヌン!すごい顔してるよ!?よしよし…大丈夫大丈夫」
「ゔわ゙あ゙あ゙ん゙」
安堵で緊張の糸が緩んだのか、
「─……ミヌちゃん!」
水狗がHONEYに抱き着き泣き喚いたその時、硬直していた筈のオクタが大声で急に怒鳴った。
愛おしい男の怒りの声にビクッと引きつらせるが、瞬時に泣き止んだらしい。
「え…あ……お、おっく、ごめ…」
怯えながらしゃくり上げる子供の様にHONEYにしがみつきながら彼女は鼻を鳴らして謝りの言葉を紡ぐ。
──大声じゃ気付かれるから。
──涙は罪を隠せないから。
悲しみなんかでは、自分達の行いを弁明する事は叶わない。
涙に訴えて周りから憐憫を寄せるのは出来ないという訳では無いが、それをした所で確かに自分達は『青年』を殺してしまった、犯行に加担してしまった、知ってしまった。その事実は拭えない。
涙で溢れさせず、冷たい土の下で眠るまで今この場にいる皆は共犯し続けなければならなくなってしまったのだから。
「──今から俺達はあいつを殺した共犯者同士なんだ」
オクタは決死の、英雄への道を歩み始めたばかりの、悲壮な主人公の役目に入り浸る。
その中で彼は言葉を紡ぎ、編み出した。
「でも俺達は何にも悪くない。さっき──ロキ君が教えてくれた通り、あいつが頭湧いてる異常者だった。そういうワケ」
シュシュは瞳を潤ませにこにこと口元を吊り上げながらうんうんと賛同する。
「俺の行為は『正当防衛』だから」
彼の狂った緑色の目が電灯の光によって明らかにされる。
「俺は間違ってない!何にも悪くない!ミヌちゃんも、シュシュちゃんも何にも悪くない!俺達は正しいの!俺達は絶対だってこと!」
炉景とHONEY、水狗は彼の小さな演説を静かに清聴する。
「ロキ君とハニハニも俺達の事を心配して来てくれたんだよね?君たちだって正当だ」
オクタは強引な同意を求めに入る。
──そして暗闇と明かりの下、5人の罪人が生まれた。
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