真相_Ⅶ
──
「あ!おっくん…」
「あ♪オクトンおかえりなさーい♪」
──電灯に照らされ落ちた影は、彼女の内面の異常さを引き立たせる。
「あ…ああ……シュシュちゃんも、おかえり…」
『青年』の死を目の当たりにして怯えるどころか天にも昇る様な恍惚と歓喜に満ち、先程からずっと嬉しそうににこにこしている彼女には軽く恐れを抱いたが、同志としてオクタはほんの少しだけ嬉しくなった。
「お二人ともおつかれさまです♡」
シュシュはぱたぱたと手を振る。
「え…おっくん、なんで嬉しそうなの?」
「え?」
突然、恐れを宿す、か細い
──なんで?
水狗の指摘に疑問が湧き、オクタはスマホを取り出す。
取り出してすぐ、スリープモードにしたスマホの画面を持ち、そのまま電灯の下へ歩く。──そこには、シュシュと同じ顔を浮かべる男の姿があった。
「…♪オクトン、願望だったんですもんね?許せなくなった『青年』の事を、何処にも居られない様にする為にネットで悪く言い広めて不特定多数に信じ込ませてやろうって。加害者に仕立て上げるって。それから俺の正義の下で殺しを正当化してしまおうって。俺にとって邪魔だから、うざったいから」
シュシュはまるでバレエダンサーの様な足取りでオクタを軸に取り巻きながら、
「確か前、オクトンは他責をする事でこの世に生きる事を許された、選ばれた存在なんだって。『みんな死ね!(^ν^)』って糾弾する事が自分には許されてるんだって」
甘い声と吐息で彼の心に触れる。
「わたしね~、オクトンの事見直しましたよ♪あなたがアイドルのように扱いつつ本気で恋しちゃった、
細身犬。水狗のもう一つの名義を敢えて引き出しながら彼女はそう言った。
普段のオクタが水狗に対してねっとりと甘い声と息を掛ける様な振る舞いを、シュシュは態とオクタに掛ける。
「わたし、心の底からオクトンのこと全部信じられる最高の仲間だと思っちゃいました♪」
他者を責め、憎む心。
己こそ正義という思考。
自分が気に喰わなければ相手は抹殺したって本当は良い筈だという思想。
形は多少は異なり、己の身も境遇も異なれど、シュシュにとってオクタは確かに己にある他害行為への意識は同じものなのだと知ってしまった。
だから彼女にとって『仲間』が出来た事は嬉しくて、彼の『青年』殺しに率先して協力的だった。
──…空気が固まった様に、時間が止まった様に錯覚する雰囲気の彼等をよそに、遠くから来る友人の気配が、今の彼等を次の段階へ進めようとしていた。
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