■■■■side 私の初めて
あれはまだ私がこの蒼雲高校へ入学する前の話。
あの時はまさに今のような晴れ渡る空の下で起きたことでした。
当時、中学三年生の時のこと。
ちょうどこの蒼雲高校の入学試験が行われていました。
もとよりこの学校は付近の私立高校の中でとても有名で入学希望者が多く、倍率も10倍前後ありました。
私もそんな自由な校風に憧れ、進学を希望していました。
.....ですが、私はその反面_いやそれ以上に不安がいっぱいでした。
もし落ちてしまったら.....こんな倍率では.....そう考えるだけで私は受験をする前から負けていた、そう思います。
もともと人見知りで内気な私がこんな明るく輝かしいライバルである受験生たちと同じ土俵に立てるなんて思えるはずもなく.....試験をする前から諦め始めていました。
そんな時、手を差し伸べてくれた方がいました。
「........おい、顔色悪いけど大丈夫か?」
それが彼との出会いでした。
「あ、い、いえ。っだ、大丈夫でしゅ」
「おいおい、大事な受験前にそんな緊張してどうすんだよ」
「............うう、実は.....」
初めてあったはずの彼に私は自分の心境を話していました。
どうしてライバルであるはずの、それこそ見ず知らずの彼に話していたのか今思ってもどうかしていたのかもしれません。
少しでも気が楽に慣れたら.....そんな淡い期待を持っていたのかもしれません。
ですが、彼は
「ふーん、でどうすんの?そのまま諦めちゃうの」
「............慰めないんですか?」
「いや.....慰めるような器量持ってないし、別に俺だって不安はある。でもな、それでせっかくの高校生活の機会をみすみす逃すことも俺はしない。.....まぁ中学で一人だった分そこまで気負いしているわけでもないしな。
まぁ、俺から言えることは悔いのない選択をすればいいんじゃないか?
ま、よく言われてるだろうとおもうけど」
そう慰めも同情もせず、ただそう言葉にするだけでした。
さすがの私も少しばかり憤りのない思いをしましたが.....正直彼の発言にもストンと胸に落ちる感覚がしました。
確かに受験を受ける機会を得て、目の前に挑戦の機会があるにもかかわらず諦めてしまうのもおかしな話ですね。
そう考えれば自然と不安が消えていくような感覚がしていきました。
肩にかかっていた変な力みもなくなり、頭がすっきりしたようなそんな感覚です。
その状態のまま、受験に挑み.....後日、無事合格の通知が来ました。
しかし、私は彼の言葉が胸の中でずっと残っています。
どうなのでしょうか、私は彼をどう思っているのか.....。
でもせっかくの高校生活ですもの、彼の言う通り悔いのない選択をしてみましょう!
美容院へ行き、髪形を変え髪色も変えてみる。
せっかくなのでスポーツやエクササイズなどの運動も行う。
もともと、読書やインドアが趣味でしたが思いのほか運動ができるということにびっくりしました。
私って自分のことを理解しきっていないものでした。
そして4月、私は無事蒼雲高校へ入学しました。
私の容姿は中学時代の友人が見ると驚いていました。
まぁ、黒髪ロングで根暗っぽい容姿から......ほぼ陽キャのような恰好をしていますし。
運動をするようになってから体型も少しばかりよくなりましたし.....。中学での私はほとんど見る影が亡くなった気もします。
せっかくなので、根暗っぽさをなくすように口調や発言を変えてみましたが.....意外としっくりくるものなんですね。
.....で、今ではほとんど別人のようになったんだ。
そんな高校生デビューを果たしたんだけど、やっぱりこの容姿になってから結構話しかける人も増えたんだよね。
そう考えると彼には感謝しかないよ。新しいきっかけをくれたんだもの。
そう思っていると彼がいた。どうやら同じクラスみたいだね。
じゃあこれから一緒の高校生活ができるってことなんだ......そんなことを思っていると自然と嬉しい気持ちになる.....でもなんだろうこの感じ、今まで感じたことのないんだけど。
自己紹介の時に彼の名前を知った、斉藤耕平ね。耕平君.....挨拶をしたけど私のことをまるで覚えていないみたいだった。
まぁ、そうだよね。最初に会ったときとは姿も話し方も違うし.....あの時名前言っていなかったもんね。
でも、それでも.....なんかもやもやする。
そんな日常が続き、4月も終わりになってそのもやもやに気が付いた。
どうやら私は彼_耕平君のことが好きになっていたみたい.....。
でも、この一か月耕平君のことを見ていても彼ってほとんどというか一人で行動しているんだよね。
どうやって話しかけていいのかわからないや.....ほかの友達にはすんなり話しかけられるのに。
.....悩みに悩んだうえ、私は1つの行動を起こすことにしたの。
どうやら.....うまくいったみたい。
私の人生初めての恋文、貴方にとって印象に残ってくれたらうれしいな。
こうして私にとっての初恋.....そして文通相手_ペンフレンドができたの。
青春のペンフレンド~手紙の絆、恋の始まり~ サイエル @saieru
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