第37話 跡

「これは……」


 俺は地面に広がる無数の帯を見る。

 まるで車で通った後のような、タイヤ痕に似た痕跡。ダンジョン内に車が乗りこんでくることなんてあるのか?


 確かにゲートから現実世界の物は何でも持ち込める。ただ、武器や防具何かは、現実のような効果は全く得られない。


 重火器も魔物は簡単に弾くし、防弾ベストを着ていても魔物の突進で簡単に風穴があく。


 ダンジョン産以外の物を簡単には受け入れないこの空間において、車というものの価値は殆どないだろう。ましてやここは森だ、こんなところを正常に走行できるとは思えない。


 ということはだ。


「まあ、必然的に魔物か探索者のスキルによって出来た物……か」


 その後は縦横無尽に広がっており、それは近くの木々も同様だ。


 俺は一本の木に近づき、じっくりとその後を見る。

 そっとその跡に手を這わす。


 波打つように木が抉れている。そして、その跡は木をぐるっと一蹴するようについている。それはどの木も同じように見える。


「こりゃあ……何かが締め付けたのか?」


 クラーケン……蛇……その類のモンスターか。

 てことは、それなりに大型のモンスターってことだよな。フィールドボスの類だろうか。それともボス? いやいや、三層まで来たらそれでも通常モンスターなのかもしれない。


「ここで戦ってた人はどうなったんだ?」


 破壊の痕跡的に、そんなに前の物ではないような気がする。

 ついさっきまで戦っていた?


 すると、多くの残された地面の痕跡の中に、茂みの中へと続く跡があることに気が付く。


 その近くには、何か大きめの物が引きづられたような跡が残されている。


「帯状の跡より幅が広いな……何かを掴んでいた? ということは……」


 この先に、ここで戦っていた奴が連れていかれた可能性がある。

 このゲーム――もとい、このダンジョンでは”デッドライン”が存在する。死んでも、ダンジョンの外の神殿で蘇生するのだ。


 たとえこの先で触手の主と戦って死んだとしても、外で生き返る。

 

 ――が、俺はゲーマーだ。見殺しにしてまでクリアなんてかっこ悪いぜ!!

 目指すは完全クリアのみ! NPCも殺させないでクリアしてやる!


 俺は剣を抜き、地面の跡を追って走り出す。


 仮にもう死んでたらそれはすまん! だが、出来るだけ生きてる可能性にかけて全力で走る!


 俺は強化された自分の走力と体力に改めて驚かせられる。

 外でこんなスピード何かでないし、50mも走れば息絶え絶えだな。魔素ってすげえな。


 そんなことを考えながら走ること一分、一気に道が開ける。

 木々で遮られていた光が漏れ出し、目の前が明るくなる。


「湖……!!」


 前面に広がるのは巨大な湖。

 そしてその中央では、複数の曲線が波打つように垂直に立っている。


 いや、あれは触手……!


 と、次の瞬間。

 その職種の先端から巨大な三角錐の氷が生成される。


「氷魔法スキル!? まさか――」


「離しなさいっていってるでしょうが……バカ!!」


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更新遅くなり申し訳ありません。

体調がしばらく安定せず、休養してました。

また更新再開していくのでよろしくお願いします……!

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