第27話 抉り取る
「っ……！！」
大ぶりの鋏が、左右2連撃で振り下ろされる。
荒々しいその攻撃を、何とか剣で弾く。
「テンリミさん！！」
「だいっ――じょうぶ！！ 攻撃は重いけど、スピードはそこまでねえ！」
これなら捌ける！
確かに重く圧のある攻撃だ。だが、この速度なら剣で弾くことは難しくない。
問題はこの威力に俺の剣が耐え切れるかということ。そして、まだ見せていないこいつのスキル構成がどうなっているかだ。
「だ、大丈夫って……そんなでかい手振り下ろされたら普通怖いでしょ！？」
「平気平気！ それより……っ！ 火撃をあいつの鋏に頼む！ ガードと攻撃同時に行ってやる！」
「！ が、がんばる……！」
俺の言葉に従い、えりぴよがファイアを繰り出す。
燃え上がる炎は、的確にボスの鋏へと飛び込んでいく。
いいコントロール……！
えりぴよの炎は、スキルのクールタイムが終わるたびに放たれていく。
こいつは俺のように武器を持っている訳じゃない。攻撃に使う身体が、そのままこっちの的にできる。だが、その鋏はクリスタルの皮膚で守られている。だから、そこを炎で剥がす！
ボスはファイアの直撃にも構わず、そのまま攻撃を振り下ろしてくる。それを的確に弾き、返す刀で鋏に横っ面を叩く。
「ギギ……！！」
ボスがダメージを蓄積してのけぞる。
「すごい……！」
「くはは！ いいねえ！ この調子で――」
しかし、そんな調子よく行くわけもなく。
ボスの体が青白く光輝く。スキルの兆候だ。
「スキルがくるぞ！ 警戒しとけ、やばかったら煙幕！！」
「は、はい！」
さあ、何がくる……！？
鋏の強化か、特殊行動、遠距離攻撃……どれだ！
俺は剣を構え、力を抜き攻撃に備える。
兆候を見逃すな、俺！
すると、奴は体を上げる。
「！」
剥き出しになった腹。
その状態で、僅かに体制を硬直させている。
なんだ、何をする気だ……？
見たところ腹の周りはクリスタルが他より少し薄く見える。厚みがあるのは、2本の腕の下、人間で言う脇のあたりからそれぞれ対角に斜めに伸びるラインだけだ。
腹の下は弱点に見えるが……。
「ちゃ、チャンスじゃない！？」
後方で援護するえりぴよが、慌てたように声を上げる。
「んな訳ねえだろ、スキル前の溜めだ！ 迂闊に飛び込んだら即死だ」
「うっ……」
瞬間、やつの口の周りに泡のようなものが浮かび上がる。そして、一瞬のけぞる。
「やば、くるぞ……！！」
この動き……遠距離攻撃が答えか！！
まずい、これは速いタイプだ……！
「――<突撃>！！」
俺は慌てて横へと退避する。
瞬間、轟音。
ボスの口元から放たれた何かが、まるでビームのように俺のいた場所へ目掛けて伸びる。
それは地面を抉り、そのまままっすぐと突き進む。
地面が直線上に抉られ、遠くにあるクリスタルの山すら傷つける。
とんでもない破壊力——いや、切れ味だ。
これは光線じゃねえ。この感じは……。
「ウォーターカッター……！」
水圧で水ブッパだ！？
こんなん当たっだら即死だぞ！？
すると、ウォーターカッターを放ったボスは上げた体を戻すと、硬直を見せる。
この隙に一旦ダメージ稼ぐ！！ 対処法は後回しだ、こいつのスキル全部吐き出させる！
「えりぴよ！！」
「うん……！！」
炎が放たれ、その箇所めがけて剣を振るう。
行けるだけいく！
するとすぐさま硬直はとけ、また動き始める。
今度はその鋏が輝き、今までの振り下ろしから、まるで突きのように俺の体を捉えにくる。
こんなの、挟まれたら一発アウトだろ！！
さっきから一撃必殺技ばっか使いやがって、これがフィールドボスか！
俺はひたすらにボスの攻撃を分析しながら、攻撃を捌き続ける。
スピードがなくはないが、デュラルハンには及ばない。
そして、ワンサイドゲームを続けて１０分も経った頃、俺は一旦の分析を終える。
「——うし、見切った！」
「本当！？」
「このフェーズはな。そろそろ攻めるぞ！」
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