第24話 クエスト
はからずしも、初のパーティでの行動となってしまった。
ソロ専門を掲げている俺としては、あまり気持ちの良い状況ではないが、視点を変えれば完璧にナシという状況ではない。
これはつまり、クエストだ。NPCの依頼をこなし、正当な報酬を貰う。
今回で言えば、そうだな……クエスト「おしゃれ装備が作りたい!」ってところか。依頼主はえりぴよ。二層の外れにあるクリスタルクラブの巣。そこに存在する水晶は、高い希少性を誇る。その水晶を使っておしゃれ装備を作りたいえりぴよの為に、彼女を護衛しながら水晶を採取する――って感じかな。
報酬はもちろん、クリスタルクラブの水晶だ。
まあ、予定外の状況ではあるけど、そこまで悪くない。ファンタジーといえば護衛任務は定番だしな。
えりぴよは配信者だ。とはいえ、ユキみたいな新進気鋭の超人気配信者とは違い、古参のメンバーがコメントしているだけのこじんまりとしたコミュニティだ。
彼らにそこまでの影響力はないだろうし、そもそもこんなところ(失礼)の配信にくるような視聴者は、ダンジョン自体にはほとんど興味はなくえりぴよの可愛さで集まって来ているだけだろう。
仮に俺が<
――けどまあ、ジートのおっさんみたいなもの好きも居るしな、極力今はまだ隠しておいた方がいいか……。
「テンリミさ~~ん、遅いよ~~!! こっちこっち!」
少し先でえりぴよがスカートをふわりとさせ、こちらを振り返り大きく手を降っている。
確かにその動作は愛らしい。めちゃくちゃおじさんたちにはモテそうだ。
けどなんつーか、女の子に嫌われやすそうでもある。ユキとか嫌いそう……。
すると、えりぴよの背後に突如としてクリスタルクラブが出現する。
「後ろ!」
「! はぁぁぁ!!」
えりぴよはすぐさま腰に差した短い杖を取り出し、クリスタルクラブに向ける。
スキル特有の光を放ち、杖の先端が赤く燃え上がる。
「<
ブワッと扇形に広がる、火炎放射。
サーカスで酒を使って火を吹く芸のように炎は広がり、その熱気がこちらまで伝わってくる。
「ギギギギ!!!」
クリスタルクラブはどうやら火が弱点のようで、透明で透き通っていたその肉体は赤く染まり始め、その動きが一気に鈍くなる。
「やった! テンリミさん、トドメお願い!」
「任せろ!」
俺は剣を振り上げると、その燃え上がり赤く染まった肉を断つ。
明らかに動きが鈍いし、こいつ特有の硬い皮膚が柔らかい。これなら一気に行ける!
「うおらあああ!!」
「ギ――――」
あっさりとクリスタルクラブは切り刻まれると、光の粒となって消える。
「ふぅ……ねえねえ、良い連携じゃない、私達!?」
「まあ、悪くはねえな。というか……」
俺は改めてえりぴよを見る。
最初の殺されかけていた状況や、キャリーで一層をクリアしたところからてっきり実戦はからっきしかと思ったけど、どうやらそうではないらしい。
「結構やるじゃん」
「えへへ、でしょ?」
えりぴよは恥ずかしそうに鼻の下を擦り、ニコリと笑う。
「それなりに戦えるならもっと人気出ても良さそうだけどな」
「デリカシーないのかこの男は!」
えりぴよはむすっと頬をふくらませ、ばしばしと俺の背中を叩く。
「痛えな!?」
「酷いこと言うなあもう! けど……まあ、なんというかこれのせいで人気が微妙といいますか……」
「どゆこと?」
「どうやら男の人っていうのは、助けたくなる女の子が好きなようでして。私みたいに中途半端だと、どっちつかずで……」
「あぁ……」
なるほど、ユキくらい強ければ強くて美人みたいになるけど、えりぴよレベルだったら微妙なラインってことか。
「まあ……なんだ。先進もうか」
「うん……」
俺たちはクリスタルクラブの巣を目指して前進する。
周りの景色も徐々に変わり始め、水色の水晶がその殆どを占めるようになってくる。
「なあ、その水晶でできる装備ってのはそこまで強くないのか?」
「そんなことないよ! 5層とかくらいまでは余裕で使えるって噂」
「じゃあ、なんで同業者に一人も会わないんだ? 俺らしかいねえじゃん」
狩り場というのは、どんなMMOでも混むものだ。
ましてや、このダンジョンはリポッポがあるかどうかもまだよくわからない不思議機構。我先にでも欲しい素材なきがするが。
すると、えりぴよは気まずそうに目を細める。
「……貴様、何か隠してるな?」
「なななな、何を言いますか!? 運が悪ければフィールドボスが出るから誰も来ないなんて言ってないですよ!」
「フィールドボス!?」
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