結婚の約束をした彼女に、「好きな人」はいないらしい
如月ちょこ
結婚の約束をした彼女に、「好きな人」はいないらしい
俺には、小さい頃から仲がいい女の子がいる。その子とは、ずっと一緒で。小さいながらも、結婚の約束までしていたのだ。
普通の男女なら距離をとろうとなるはずの中学生になっても、お互いにそんなことにはならなかった。
そんな関係が続いて、もう13年。俺たちは高校生になった。
けど、俺が一番仲がいい女友達は彼女で。
彼女が一番仲がいい男友達は俺で。
周りの友達からは、夫婦じゃん? って言われるような関係性だった。
そんなある日。彼女がイケメンな男子に呼び出されたらしい。
しかも、告白の名所と言われている場所に。
胸がざわつく。たしかに今まで、彼女が告白されたことはあった。
けど、こんなイケメンからはなかったのだ。
どうしよう。もし、彼女がそのイケメンと付き合ってしまったら。
俺と彼女は、付き合っているわけではない。だから、こんな感情を抱くこと自体がお門違いだ。
けど、怖いのだ。
だから、見に行ってしまったのだ。
彼女が告白される場所に。
「俺と、付き合ってくれませんか」
イケメンが言う。少しの間のあと、彼女は、笑った。いや、微笑んだ。そして、一言。
「ごめんなさい」
なぜなのだろうか。あんなイケメンに好かれるなんて、滅多にないだろう。
と、思う気持ちと同時に、どこかほっとした自分もいて。
また、その男はただ顔がいいだけなのではなく、性格までよく、女子からの人気も高い。
そりゃあ、自分に自信があるだろうイケメンが疑問に思うのは当然で。
「どうしてなんだ? 好きな人でもいるのか?」
いるんだろう。お前が振られてるってことはそういうことなんだろう。
あぁ。辛いものを見てしまった。彼女は、好きな人がいるんだ。
明日からは、少し距離をとろう。そう思っていたのに――
「うーん。好きな人、は、いないよ?」
なんで。どうして。
「じゃあ、なんでなんだ?」
イケメンは必死に食い下がるも――――
「あは。しつこい人ってね、嫌われるんだよ」
彼女からそんなことを言われてしまっては、もうイケメンも引き下がるしかなく。
結局、疑問は解決しないまま終わった。
その後、偶然を装って彼女と出くわし、一緒に帰る。
こういうときは、彼女はいつも俺の腕をとってくる。だから、教室でも夫婦だと言われるのだ。
「あのさ、?」
ここは一つ、きいてみることにする。どうしても気になってしまったんだ。
「うん? どしたの?」
「今日、イケメンに告白されてただろ?どうして付き合わなかったんだ?」
勇気を出して聞いてみると、彼女から帰ってきた答えは衝撃すぎるもので。
「え? だって、私、君と結婚の約束したじゃん? もう、婚約者いるようなものだし」
………え?
「覚えてた、のか?」
「当たり前でしょ? 私の未来の、旦那様。」
……良かった。これからも彼女は、俺のそばに、一生いてくれるらしいです。
______
「けど、婚約者のこと好きじゃないって、ちょっと哀しいんだけどなぁ…」
「あっ…! 好き! 好き! 大好きだから!!」
完
結婚の約束をした彼女に、「好きな人」はいないらしい 如月ちょこ @tyoko_san_dayo0131
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