僕も、彼の彼女のように、彼に愛してもらいたい

白川津 中々

▪️

 愛しているのは事実だった。

 伝えられないのは、彼が男だから。

 そう、それもある。けれどそれだけじゃない。彼は僕を愛していないし、今後愛さない事も知っているからだ。


 彼には彼女がいる。艶やかな黒髪が少しだけ目元を隠して、控えめに笑う、可愛らしい子。

 僕は彼女も好きだった。遠慮がちで優しい、裏表のない彼女を嫌いにはなれなかった。

 彼と付き合っている事を知ってもそれは変わらなかった。行き場のない感情が涙となって溢れても、彼女を恨んだりする事はなかった。

 けれど、彼が彼女の事を名前で呼んで、彼女が彼の事を名前で呼んで、彼が彼女を抱きしめて、彼女が彼を抱きしめて、彼が彼女にキスをして、彼女が彼にキスをして、お互いに、お互いに愛し合っているところを見ると、僕はどうしても、どうしても、どうしようもなくなるのだった。


 彼は僕を愛していないし、今後愛さない事も知っている。

 けれど、あぁ、けれど。

 僕も、彼の彼女のように、彼に愛してもらいたい。

 

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僕も、彼の彼女のように、彼に愛してもらいたい 白川津 中々 @taka1212384

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