琴子と水着を買いに行く
とある夏休みの日の午前中、今週末に琴子と海に行く約束をした僕は水着の準備をしていた。しかし…。
「うーん…ちょっとキツイかな?」
タンスから水着を引っ張り出してきたのはいいのだが…僕が去年より成長したのか、水着大分がキツくなっていた。特に股関節のあたりが締め付けられて動くと痛い。
これは…新しいのを買いに行かないとダメかな? 僕はそう思いながら水着を脱ぐとそれをゴミ箱に捨てた。
○○〇
「じゃあ明日は一緒に水着を買いに行かない? 私も去年の水着がキツくなっちゃって…胸の辺りとか」
その日の午後、僕と琴子は僕の部屋で夏休みの宿題を一緒にやっていた。できるだけ早く夏休みの宿題を終わらせて、2人で残りの夏休みを思いっきり満喫できるように頑張ろうという算段ある。
僕が午前中の出来事を琴子に話すと彼女はそう提案してきた。だが僕は女の子と一緒に水着を買いに行くのには少し抵抗があった。
だって水着って実質下着とあまり変わらないじゃないか。人によっては下着と水着は全然違う…例えば「服の下に隠して着る物と海で人に見せる事を前提に着る物だから違う!」という人がいるのだろうけれども、少なくとも見えている肌面積の多さは似ている。
実質、彼女が自らの下着を選ぶのに同行しろと言っているようなものである。これで緊張するなという方が無理である。
僕のそんな様子を見て琴子はクスクスと笑ってきた。
「武光君…今エッチな想像してるでしょ?」
「えっ? いや、そのぉ…してないよ?」
琴子に図星を突かれた僕はしどろもどろになりながらもなんとか否定した。これは誠実をモットーにしている人間として否定しておかなければならない。そんな気がした。
琴子はニヤリと笑うと僕に近づいてくる。そして耳元でこうささやいた。
「武光君の好きな水着、着てあげようか♡ セクシーな奴♡」
「ッ!//////」
僕は彼女の言葉にピクリと震える。男性として自分の彼女が自分好みの水着を着てくれるのは凄くこう…そそるものがあるのは確かだ。
「う、うーん。僕は琴子には自分に似合う水着を着て欲しいな。琴子は可愛い系の水着の方が似合いそうだけど…」
しかし僕は彼女の申し出を涙を飲んで断った。理由としてはあまりに僕好みな水着を着てこられると僕の理性が持たなくなりそうなのと、あとは…海なので当然他の男もいる訳である。なので他の男に琴子のセクシーな姿をあまり見られたくなかったというのがある。
可愛い系の水着ならば布の面積が多くて琴子の肌が隠れるだろうと思案しての事だ。僕の理性に歯止めをかけ、尚且つ、他の男に琴子の肌を見られるのを防止する一石二鳥の提案である。
「ふーん♡」
琴子は僕の方をニヤニヤとしながら見つめて来た。これは明日は苦労するかもしれないな…。
○○〇
翌日、僕と琴子は電車に乗って隣町のスポーツ用品店へと向かった。中に入った僕たちは早速水着のコーナーに向かう。
僕の水着はすぐに決まった。男性用の水着はデザインにあまり差がないし、サイズが合っている物を選ぶだけだ。僕はトランクスタイプの水着を選ぶとサイズが合っているか確かめるために試着室へと入る。
琴子は僕にブーメランパンツタイプの水着を勧めてきたが…流石にアレを穿くのは勇気がいるので断った。
試着室へと入った僕は服の上から水着を試着する。水着を素肌に直接試着するのはNG行為だ。なので服の上から試着するのである。
…うん、これなら大丈夫そうだ。値段もお手ごろだしこれにしよう。
試着室から出た僕はそれを会計に持って行き、清算をする。僕が水着を購入し終わったのを確認した琴子は僕を女性用の水着コーナーへと強制連行した。
「どれにしようかなー?」
ご機嫌な様子で水着を物色する琴子。僕はその様子を緊張しながら見守った。女性用の水着コーナーだけあって、周りには女性客と女性用の水着しかない。男性がここにいるだけで心臓がバクバクものだ。むしろ僕がここにいて良いのかという気分になる。
いたたまれなくなった僕は琴子に「休憩コーナーの方にいるよ」と伝言を残してその場から立ち去ろうとしたのだが…彼女に手首をガシッと掴まれた。どうやら彼女はそれを許してくれないらしい。
仕方ないので僕は彼女の水着選びに同席する事にした。
「これとかどうかなー♡」
琴子は数ある水着の中から1着を選ぶと自分の身体に当てて僕に見せつけて来る。彼女が選んだのは白いビキニだった。セクシーな王道の水着で、ブラジャータイプのトップスとパンツタイプのアンダーという非常に布面積の少ない水着である。
僕はその水着を着た琴子を想像してみる。確かにスタイルの良い彼女がこの水着を着たら似合うだろうなぁ。
「好感触みたいだね♡ これにしようかな?」
琴子は僕の表情から読み取ったのか、そんな事を言う。
「こ、琴子にはもっと別の水着が似合うと思うよ」
しかし僕はそれにNGを出した。理由はセクシーすぎるからである。セクシーなのはダメ、絶対!
「じゃあ~…これとかは?」
「ブッ。ゴホッゴホッ」
僕は琴子が次に選んだ水着を見て、びっくりして涎が気管に入りむせてしまった。彼女が選んだのはなんとスリングショットだったのだ。
スリングショットとはかなり布面積の少ないV字型の水着の事である。生地の形が投石機のスリングショットに似ていることからこの名前が付けられたらしい。
「それは絶対にダメ!!!」
僕は秒で反対した。こんなの自分の彼女に着せたがる人なんていないだろう。
「あれ~? 武光君のお気に入りの『巨乳美女大集合! ~巨乳美女のお胸にご参パイ 真夏の白濁祭り!~』に出てた人もみんなこれ着てたから好きなのかと思った」
彼女はクスクスと笑いながら僕を見て来る。バレてる。僕の好みがしっかりと彼女にバレている。琴子は本を捨てる時にしっかりと中身もチェックしていたらしい。
そりゃ僕も男だからセクシーな水着は好きだ。しかし、自分の好みと彼女に来て欲しい水着は別なのだ。
…致し方ないか。僕は自分の本心を彼女に打ち明ける事にした。
「あのね琴子。僕はあまり琴子に肌面積の少ない水着を着て欲しくないんだ。その…海に行くからには他の男もいる訳だし、他の男に琴子をそんな目でみられたくないんだ。ごめんね、器の小さい男で」
琴子は僕の言葉を聞くと「ハッ」とした表情をして抱き着いてきた。
「ううん、私の方こそごめんね。私の頭の中にはどんな水着を着れば武光君を喜ばせられるのかっていう考えしかなかった。武光君の気持ちを考えられてなかったね。でも同時に嬉しくもあるの。それって武光君が私を大事に思ってくれてるって証拠だもん」
琴子は僕の説得に納得してくれたようだった。良かった、これで彼女がセクシーな水着を着るのを避けられた。
「だからこれは武光君の前でだけ着るね♡」
「えっ?」
彼女はそう言ってニヤリと笑った。彼女が人前でセクシーな水着を着る事は回避できたようだが、僕の前で着る事は回避できなかったようだ。ううん…理性が耐えきれるかな?
結局、彼女は僕の要望に従って布面積ができるだけ大きくてかわいい系の水着を購入したようだった。「海水浴に行くまでナイショ♪」と言われてどんな水着かまでは分からなかったけど。
「海、楽しみだね♡」
彼女はそう言いながら嬉しそうに微笑んだ。
○○〇
ちょっとあふたーすとーりーは文字数が多くなりがちですね。多いと言う要望が多ければ少なくします。
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