眠れなかった…
結局、その日僕はほとんど眠れなかった。確か午前4時ぐらいまで起きていたのは覚えている。それくらいになってようやく琴子の匂いが薄くなってきたのだ。
朝、目が覚めると6時すぎだった。2時間ぐらいしか寝てないのか…。いつもならこれくらいは気にしないのだが、テスト期間中に睡眠不足なのは後々響いてくるかもしれない。
学校が始まるまではまだまだ時間がある。あと1時間ぐらいは寝ていても大丈夫だ。しかしそれ以上眠れる気がしなかった僕は久々に早起きをする事にした。ベットから降り、寝間着を脱いで制服に着替える。
その際に琴子からプレゼントされたチョーカーもしっかり着用する。2人の愛の証だ。校則違反になるのではないかと心配していたが、琴子が2日着けていても何も言われないのだから問題ないのだろう。
そしてチョーカーの上からいつもの如く、神様らしき人から貰った勾玉のネックレスを身に付けようとした…のだが、僕はその勾玉を見て違和感に気づいた。
…あれ? なんか勾玉の輝きがくすんでいるような…?
気のせいだろうか? 以前はもっと青々と綺麗に輝いていたような気がするのだが…僕がお風呂に入る時以外はずっと身に着けていたせいで、人の油や垢で宝玉が劣化してくすんじゃったとか?
あの髭もじゃの人が本当に神様かどうかは分からないが…一応神様から貰ったものを粗末に扱うとバチが当たるかもしれない。…今日学校から帰ったら勾玉の保存方法について調べてみるか。
着替え終わった僕は朝食を食べるために下の階に降りた。
○○〇
「珍しいね。武光君が私が来るより先に起きているなんて? 寝顔が見れなくて少し残念」
琴子は7時30分頃に僕を迎えに来た。すでに学校へ行く準備を整えていた僕は琴子と一緒に家を出る。たまには早く学校へ行くのも悪くはないだろう。
「もしかして…昨日はお楽しみだった? スッキリして早く寝たから早起きできたとか? アレが少しでも武光君の役に立ってくれたら嬉しいな♡」
琴子はニヤニヤと笑いながら僕を見て来る。アレとは…昨日渡された下着の事だろう。本当にとんでもない物を渡してくれたもんだ。昨日はアレとベットの匂いのせいで全然眠れなかった。
彼女からすると僕がエロ本にその情熱を放つよりも自分の物に放ってくれた方がマシという考えなのだろうけど、流石にそれはちょっと抵抗がある。本当にどうしたらいいんだろうなアレ。
彼女とそんな話をしているといつの間にか学校についていた。
僕たちは靴箱で靴を脱いで上履きに履き替え、自分たちの教室へ向かう。その途中、横浜の仲間でのっぽの岡崎とすれ違った。
彼は琴子の姿を見るや「ひぇ…」と言って腰を抜かし、その場でまたしても股間に水たまりを作る。周りに酷いアンモニア臭が広がる。その横で彼の友達らしき男が「何やってんだよ。うわっ、こいつ小便漏らしてるぞ! とっととトイレ行って来いよ…」とドン引きしていた。
彼はこの前の一件が完全にトラウマになっているらしい。あそこまでトラウマになっているのなら、岡崎はもう僕たちに関わって来る事は無いだろう。
「便所コオロギには便所がお似合いだね♪」
琴子はそう蔑むように言った。我が彼女ながら恐ろしい…。絶対に彼女は怒らせないようにしよう。僕たちは小便を漏らした岡崎をしり目に教室へと向かった。
教室に着いた僕はチラリと中を覗いて横浜と柏木がいないことを確認する。全く…自分の教室なのにいつまでこういう事をしなくてはならないのか。迷惑な連中だ。横浜を〆るという話があるが、いつ頃やるのかな。
自分の席に向かうと、前の席の康太はすでに来ていた。彼はいつもこんなに早くから登校していたのか。僕は彼に朝の挨拶をする。
「おはよう、康太!」
「おっす! 武光。瀬名さんもおはよう! 今日も2人で仲良く登校か? 伊達に我が高校屈指のオシドリカップルと言われてねぇな!」
「もうっ//// 田中君ったら//// 私たちを褒めても何も出ないよ///」
琴子は僕たちが仲が良いと言われたのが嬉しかったのか、顔を赤くして喜んでいる。というかオシドリカップルって何さ?
「あれ、知らないの? お前らがあまりにも仲睦まじいから校内でそう言われているらしいぜ」
「へぇ、そうなんだ」
確かに自分でも僕と琴子は凄く仲の良いカップルだと思う。でも校内でそんな風に言われていたのか。全く気が付かなかった。
「お前ら休み時間や弁当食う時なんかに隠れてイチャついてるつもりなんだろうけど、意外とそれを見ている人がいるんだぜ? で、そこから話が広まったってワケ」
「えっ…」
えぇ…琴子と散々イチャついている所を他人に見られていたのか…。誰にも見られていないと思ってた。結構恥ずかしい。うーん、これからはもっと人目を気にして琴子とイチャついた方がいいな。気を付けよう。
「どうして? もっと見せつけてあげればいいじゃない?
琴子はそう言って僕の腕に抱き着いてくる。そうか、彼女にとっては虫よけの意味もあって仲睦まじさをアピールしたいんだったな。僕はちょっと恥ずかしいけど、仕方ないか。
「あれ? お前らそのチョーカー…」
康太は僕たちが首に着けていたお揃いのチョーカーに気が付いた様だ。
「あ、田中君も気づいた? 私たちの愛の証に。ねぇ武光君♡」
「かぁ~、お揃いのアクセサリーを付けるなんてお前らもう結婚しろよ。式はいつやるんだ? 俺も呼んでくれよ?」
僕たちはそのまま先生が来るまでずっと康太に冷やかされていた。
○○〇
最終回に向けてちょっと伏線。あと1週間程度で終わります。
今後の展開が気になるという方は☆での評価やフォローお願いします。
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