悶々とする僕
「琴子ちゃんをキチンと家まで送って行くのよ」
母親にそう言われて僕たちは家の玄関を出た。時刻は19時30分、いくら夏とは言ってもそろそろ暗くなる時間帯である。
「お義母様、遅くまでおじゃまいたしました」
「琴子ちゃんならいつでも来てくれて良いのよ」
琴子と僕の母親はもう大分仲が良くなっている。彼女は着々とうちの家族をてなづけていっている様だ。手際が良すぎて少し怖い。
「じゃあ行こうか」
「うん♡」
僕と彼女はほのかに薄暗くなってきた道を2人で歩いていく。日は沈みかけているが、まだまだ暑い。先ほどまでエアコンの効いた室内にいたので少し歩いただけでも僕たちの肌には大粒の汗が噴き出ていた。
琴子の家は僕の家から東に30分ほどの所にある。
「ちょっと遅くなっちゃったなぁ…。琴子の御両親、心配してるんじゃない?」
琴子の家に着く頃には早くて20時になる。高校生が帰るには少し遅い時間だ。…彼女が中々お仕置きのキスを終わらせてくれなかったせいでもあるのだが。
「大丈夫だよ。今reinで連絡入れたから」
彼女はreinの画面を僕に見せて来る。そこには琴子の母親からのメッセージで簡潔に「了解! 彼氏とイチャイチャしてたから遅くなるのね」と書かれてあった。
えぇ…僕とイチャイチャするのは彼女の親も了承済みなのか?
「私のお母さんもお父さんと大恋愛の末に結婚したから、娘の恋愛にはかなり寛容なの」
「そ、そう…」
なんか琴子の一族って女性の権限が強そうだよね。旦那は完全に尻に敷かれているというか…僕もそうなりそうだけど。
「♪~♪~」
琴子は流行の恋の歌を鼻歌で歌いながら僕の隣を歩いている。僕と30分にも及ぶキス…彼女に言わせると「武光君成分」を補充したとの事なので、今の彼女はすこぶるご機嫌だった。
彼女と話しながら歩いていると、いつの間にか彼女の家はもう目の前に見えていた。琴子といるといつも時間があっという間に過ぎてしまうので不思議である。
彼女の家には何度か学校の帰りに彼女を送って来た事はあるが、いつ見ても大きい立派な家だ。おそらく彼女の一族は結構なお金持ちなのだろう。
「武光君、送ってくれてありがとう♡」
彼女は玄関の前で振り返ると僕に礼を言ってきた。
「いやいや、彼氏として当然の事だよ」
「じゃあそんな武光君にプレゼントをあげるね♪」
「プレゼント?」
彼女は腕を服の中に突っ込んでゴソゴソし始めると、何かを僕の鞄に突っ込んできた。
何かと思って見てみると、それは彼女のブラジャーだった。しかもスケスケのエッチな奴。今脱いだものらしく、彼女の温もりが感じられる。
「えっ、ちょ!? 琴子!?」
こんなものをプレゼントとして渡されてもどうすればいいのだろうか? 僕は困惑した。
彼女は戸惑っている僕に抱き着いてきた。下着を付けていない彼女の大きな胸の感触が服1枚を隔てて僕の胸板に伝わる。心なしかそれはいつもよりも柔らかく感じられた。そして彼女は僕の耳元でささやいた。
「武光君がもうエッチな本に浮気しないように私からのプレゼント♪ 今までつけていた物だから、私の匂いもバッチリついてるよ♡ 今はそれで我慢してね♡」
彼女はそんなとんでもない事を言い放つと「バイバイ、また明日ね」と言って家の中に入って行った。
彼女の母親に遅くなった事を謝罪しないと…とここに着いた時は思っていたのだが、僕の頭は彼女の突然の行動に思考を持っていかれ、混乱していた。
結局、彼女はすでに家の中に入って行ったのに、また家を尋ねるのはどうかと思った僕はそのまま帰る事にした。
○○〇
「武光、帰ったの? ご飯できてるわよ」
「うん…」
「どうしたのあんた?」
僕は家に帰ってからも心ここにあらずと言った感じだった。頭の中が彼女からプレゼントされたあの下着で一杯だったのだ。いや、本当にどうすればいいんだろうか?
夕ご飯を食べた後、僕は自分の部屋に戻って机の上に彼女から貰った下着を広げてどうするべきかを考える。
こんなの貰ってもエロ本以上に隠し場所に困るし、使えと言われても…彼女の下着を使って自慰行為をする…流石に僕はそこまで変態ではない。
いっその事彼女に突き返すか? だがそれはそれで彼女は怒りそうだ。
うーん、上手い処理方法が思いつかない。とりあえずエロ本と一緒で隠す方向にするかと判断した僕はそれを辞書群の裏に隠すべく手にとった。
その時僕はふと下着から漂ってくる甘い匂いに気が付いた。これは…琴子の匂い? 脳を痺れさせるような彼女の甘い匂いがその下着にはこびりついている様だった。その匂いを嗅ぐたびに僕は彼女の事を思い出して身体が熱くなる。
…いやいや、僕は変態じゃない! 絶対にそれはしないぞ!
僕はそう硬く決心すると、それを辞書群の裏に押し込んだ。
時計を見ると時刻はもう23時になっていた。下着の処理方法を考えているうちに大分時間が経ってしまったようだ。今日はもうお風呂に入って寝るか。
「ふぅ…さっぱりした」
風呂に入った僕は寝間着に着替えてベットに入る。だがそこでもまた問題が発生した。
おそらく…昼間に琴子がベットの上でゴロゴロしたせいだと思うが、僕のベットには彼女の匂いが充満していた。彼女の麻薬の様な匂いが僕の全身を包む。僕の身体は彼女を思い出してまた熱くなってしまった。
これは…ある意味生殺しである。彼女はとんでもない事をしてくれたな。悶々とした僕はその日全く眠れなかった。…今度から琴子がベットでゴロゴロするの禁止にしよう。
○○〇
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