彼女へのプレゼント
食堂でお昼を取り、残りの水槽を回り切った僕たちは水族館の最後にあるお土産コーナーに来ていた。琴子と一緒に魚や水生生物をモチーフにしたユニークなお土産の数々を見て回る。
「等身大のダイオウイカのぬいぐるみだって…」
「デッカ…」
まず僕たちの目に入ったのは10メートルはあろうかというダイオウイカのぬいぐるみだった。こんなのよっぽど大きい家じゃないと置くとこないんじゃないか? お値段はなんと4万円…結構するな。
「アザラシの毛が入っているキーボルダー?」
「こんなのあるんだ?」
次に目を引いたのはこの水族館のマスコットキャラクターにもなっているアザラシの「毛」が入ったキーホルダーだった。アザラシの「毛」とか欲しがる奴いるのかと思ったが、お守り代わりに意外と売れているらしい。
僕は彼女と腕を組みながら次の棚に進む。
「魚の匂いの香水?」
「臭そう…」
その次の棚に置いてあったのは魚の匂いのする香水、サケやらサンマやら色々種類があるらしい。お試し品が置いてあったので興味本位でワンプッシュしてみたが、案の上生臭い匂いしかしなかった。
うぇぇ…後でトイレで洗ってこよう。琴子は僕のそんな様子を見て楽しそうに笑っていた。まぁ彼女を笑わせられたからOKとしよう。
流石に生臭い匂いをさせながら歩くのもアレなので、僕は少しの間琴子と別れ、トイレに行って石鹸で匂いを落としてくる事にした。
○○〇
「あれ? 琴子どこに行ったんだろう?」
僕がトイレから戻るとそこに彼女はいなかった。トイレの前で別れたはずなんだけど…彼女もトイレかな?
「武光君ごめーん」
と思ったのもつかの間、お土産屋の方から彼女が走って来た。
「ごめん武光君、ちょっと気になる商品があったからそっち見てたの」
「そうだったの。別に構わないよ」
気になる商品か。せっかくだし彼女に何かプレゼントしようかな? 記念すべき初デートだし、彼女にはいつもお世話になってるし。
僕と彼女は再び腕を組むとお土産屋に向かった。…もう彼女とは腕を組むのが当たり前になっているな。これくらいは別にいいけど。
僕たちはウィンドウショッピングを再開した。魚の香水が置いてあった棚の次の棚に向かうと、そこにはペンギンのグッズが所狭しと並べられていた。キーホルダーをはじめとしてハンカチやマグカップなどもある。ペンギンはやはり人気らしく、そのグッズの種類も他と比べて格段に多かった。
もしかして…琴子が気になっていた商品ってペンギンのグッズかな? 彼女、ペンギン好きだし。
彼女の様子を見ると少しソワソワしているような気がする。やっぱり欲しい物があるんだろうな。
「琴子はどれが気に入った?」
「どれも可愛くて迷っちゃう…」
悩んでいる彼女の顔の方が可愛い…いや、本当に。彼女の表情はどれをとっても非常にキュートだ。ただ…怒った時だけは小便が漏れそうなほど怖いけど。
僕はポケットから財布を取り出して中身を確認する。…複数のグッズを買ってもいいくらいには余裕がある。琴子には普段からお弁当とかを作ってもらってるし、彼女が気に入った物は全部買ってあげようかな? 可愛い彼女が欲しい物は買ってあげたくなるものだ。
琴子はしばらく迷っていたようだったが、やがてペンギンのキーホルダーを1つとるとそれに決めたようだ。
「一つでいいの?」
「うん、この子が一番可愛いと思う。武光君に似てるし♡」
僕に似てるかなぁ? ペンギンの顔などどれも一緒に見えるのだが、彼女の中では違うらしい。
僕は彼女からそのキーホルダーを奪うと会計に持っていこうとした。
「えっ? 自分で払うよ」
「ここは僕に出させて。いつもお世話になっている琴子へのお礼だから」
「武光君…ありがとう。じゃあその…ついでに…なんだけど、もう一つだけ我儘言ってもいいかな?」
実はまだ欲しい物があったのだろうか? それくらいはお安い御用である。可愛い彼女のためなら多少の散財は痛くない。
琴子は僕を別のコーナーに連れて行った。
「実はね、武光君がトイレに行っている間にこれを見つけて、それからずっといいなと思ってたの。これを…お互いにプレゼントしあわない? それが私の我儘」
彼女が欲しいと言った物…それはチョーカーだった。青色の細いチョーカー。値段もそんなに高い物ではなく2000円程度である。
僕は別に構わないんだけど…どうして彼女はチョーカーを欲しがるのだろうか? 僕の中でチョーカーといえば陽キャのオシャレグッズの1つという印象しかない。
疑問に思った僕はそのチョーカーの下に貼りつけられていた売り文句の書かれた紙を見る。
『恋人へのプレゼントにおススメ! お揃いのチョーカーで仲の良さをアピール!』
なるほど…恋人同士でこれをつけるという事に彼女は惹かれたのかな? 彼氏と彼女でお揃いのファッションを身につける…そう言われると僕もそれが良い物のように思えて来る。僕はそれを承諾する事にした。
「分かったよ。僕と琴子が1つずつ買ってプレゼントしあえばいいんだね?」
「ありがとう武光君♡ 私こういうのにずっと憧れてたの!」
僕はチョーカーとキーホルダーをもって会計へと向かった。意外と琴子もこういう少女趣味な所あるんだな。
「武光君♡ 異性にチョーカーをプレゼントする意味って知ってる?」
琴子が後ろでボソリと何かを呟いた気がしたが、僕はそれに気付かずレジで商品を清算した。
○○〇
※チョーカーを異性にプレゼントするという事は「独占したい」「束縛したい」という意味になります
今後の展開が気になると言う方は☆での評価やフォローお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます