琴子と初デート
来たる土曜日、僕は琴子とデートするべく、身だしなみを整えて駅前で待っていた。
初彼女との初デートである。僕は若干緊張で武者震いをしていた。待ち合わせの10時まで後10分…もう一度身だしなみをチェックしとくか。彼女の前で恥ずかしい格好は見せられない。
そう思った僕は駅のトイレの鏡で身だしなみを再チェックしようとそこから移動しようとした。しかしその時…。
「だーれだ♡」
そんな声と共にいきなり冷たい
「琴子」
「せいかーい♡」
そこには満面の笑みの琴子…僕の彼女がいた。彼女は夏らしく涼し気な白いワンピースにその身を包んでいた。夏の生ぬるい風で彼女が着ているワンピースがひらひらと踊る。僕はその様子を見て思わず心打たれた。
例えるならまるで西洋絵画の名作のような光景。もしこの場にルノワールやマネといった絵画の巨匠がいたなら…間違いなくこの瞬間を絵画の中に閉じ込めたいと思うだろう。それほどまでに彼女の姿は可憐で…素晴らしかった。
美少女と白いワンピースのマリアージュ…。この季節にこのコンビに勝てるものなどありはしない。僕は彼女の姿に見惚れて数秒程固まってしまった。いや、目を離そうとしても離せなかったのだ。彼女に目をくぎ付けにされている。
「あれ、武光君どうしたの? もしかして私の服…変だった?」
琴子が不安げな顔で僕を見上げて来る。声をかけられて僕は初めて彼女から視線を離すことが出来た。
「ご、ごめん。琴子が可愛すぎて…言葉が出てこなかった/// 全然変なんてことはないよ。むしろ良く似合ってる」
僕は赤面しながらもなんとか絞り出すような声で言った。だってしかたがないじゃないか、本当に言葉を失うほど綺麗だったんだもの。
「あっ、そうだったんだ。もしかして…私に見とれてた?」
僕は彼女の問いにコクリと頷く。
「嬉しい♡ 武光君はこの格好好きかなって…昨日3時間かけて服を選んだんだよ?」
彼女はそう言って嬉しそうに僕の腕に抱き着いてきた。彼女の豊満な胸が腕に押し付けられる。おそらく…僕の腕と彼女の胸の間にはワンピースと下着の2枚しかないので、その柔らかな感触がほぼダイレクトに僕の腕を襲う。
僕はその感覚にドギマギとしてしまった。いきなり抱き着いてくるのは反則だよ琴子…。
「あっ! そろそろ電車が到着しそうだよ。ホームに移動しようか?」
それをごまかすために僕はその場から移動する事を提案した。
○○○
ガタンゴトン、ガタンゴトン
僕と琴子は電車に揺られて隣町を目指していた。土曜日なので電車は思いのほか混んでいる。彼女と一緒に座れそうな席を探すが、どうやら全然空いていないようだった。
おっ!? 前の方に1人用の席が空いている。他には…この1席だけか、しょうがない。琴子に座ってもらおう。
「琴子、ここ空いてるから座りなよ」
僕は琴子に席に座る事を勧めた。女性は男性よりも体力がない人が多いと聞く。ならばここは彼女に座って休んで貰い、男である僕は立っているべきだろう。
「えっ、でも武光君は?」
「僕は立ってるよ。隣町までたかが10分だし」
「じゃあ私も立ってるよ。武光君とくっ付いていられる方が嬉しいし♡」
彼女はそう言いつつ、また腕を絡ませて僕の腕に抱き着いてきた。再び彼女の胸の柔らかな感触が僕を襲う。彼女…これ完璧に分かっててやってるな。初心な僕の反応を見て楽しんでいるのだろう。
この感触は男をダメにする感触だ。そう思った僕は彼女から少し離れようとした。
「琴子、悪いけど暑いから少し離れてくれると嬉しいかな?」
「そう言って離れようたって無駄だよ♡ 武光君これ好きでしょ?」
暑さを理由にして彼女から離れようとしたのだが、ものの見事にそれを見破られてしまう。彼女は僕の要望とは逆に、更に胸を「ギュッ」と押し付けて来た。「ぽよん」とその柔らかな物は形を変えて僕の腕に密着し、その幸せな感触を届ける。
ううっ…これはヤバい。抜けられなくなりそうだ。
「もっと私にハマっていいんだよ。そして…抜けられなくなっちゃえ♡ 私から絶対に離れないように…」
…琴子が小声で何かを言った気がするのだが、腕の方に神経が集中していたせいで聞き取れなかった。何と言ったのだろうか?
彼女とそんな攻防をしているうちに電車は目的地である隣町の駅まで着いた。僕と彼女は電車から降りる。もちろん、琴子は腕に抱き着いたままだ。
「そういえば武光君、今日はどこに行くの?」
「それは…ついてからのお楽しみかな?」
僕はなんとか彼女の柔らかな攻撃に耐えながらそう答えた。
○○〇
では改めて本格的に連載を開始します。よろしくお願いします。
ちなみに作中の季節が夏なのはこの作品を夏頃からちょくちょく書いていたからです。1話を書いたのがちょうど7月ぐらいですね。
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