僕の彼女は僕一筋!
僕と琴子は一緒に学校に登校した。
「おっす武光! 昨日の今日でもう一緒に登校か? 朝からお熱いねぇ!」
前の席に座っている康太が早速冷やかしてくる。僕と琴子は鞄の中の教科書を机の中に入れるとお互いに向き合って談笑しあう。しかしその最中に僕らに近寄ってくる影があった。誰だと思って見上げるとそれは横浜だった。
横浜英明…クラス1のイケメンでトップカースト、だが性悪。僕が以前好きだった柏木の今カレでもある。そんなこいつが一体何の用だろうか?
彼はどうやら琴子に用事があるようだった。
「瀬名琴子さん。ちょっといい?」
横浜が普段の性悪顔とは比べ物にならないほどの誠実な顔をして琴子に話しかける。
なるほど…どうして女の子は彼の性格の悪さに気が付かないのかと思っていたのだが、女の子に話しかける時はこうやって本性を隠していたんだな。そして彼の甘いマスクに騙された女の子は彼の毒牙にかかってしまうと…。
「何ですか? 私は今武光君とおしゃべりするので忙しいんですけど」
琴子は僕と話している時とは全く違う声…高さが1オクターブほど低い声を出して横浜を睨みつけた。僕との会話を中断されたことにいら立っている様だ。我が彼女ながら怖い。
「実はさ…俺瀬名さんに一目ぼれしちゃたんだよね。だから俺と付き合わない?」
僕は彼のその言葉を聞いて「はぁ? 何言ってるんだこいつは?」と思った。お前は柏木の彼氏じゃないか。それなのに何故琴子を口説いているんだよ。
腹が立った僕は彼に言葉を放った。
「横浜! お前は柏木の彼氏だろ? 彼女がいるのに他の女の子を口説くなよ。それに琴子は僕の彼女だ!」
「…武光君/////////」
「そうだそうだ! 武光! 言ってやれ!」
僕の言葉に琴子は顔を赤らめ、一緒に会話を聞いていたであろう康太が普段の恨みを込めてヤジを飛ばす。
「うるせぇよ陰キャ! お前には聞いてねぇ! 柏木とはもう別れたんだよ。だから何も問題はねぇよ! ねぇ瀬名さん? どうかな? 俺って結構人気あるんだけど…?」
彼は再びイケメンスマイルをして琴子に微笑む。
柏木と別れただぁ? だって2人はついこの前に人前でベロチューまでしてたんだぞ。それなのに別れるっておかしくないか?
やはり横浜は柏木の事が好きで付き合った訳ではなく、ゲームで落としただけだったのか。だからそんな簡単に別れるなんて言えるんだなこのクズめ! こんな奴と話してたら琴子が穢れる。僕は席を立つと琴子の壁になるように横浜の前に立ちはだかった。
「お前いい加減にしろよ!」
「ハッ! お前に他人の恋愛をどうこう言われる筋合いはねぇよ! 瀬名さんみたいな美少女は俺みたいなイケメンと付き合った方が幸せだって何で分からねんだよこのドアホ、カス、ボケが! 瀬名さんもそう思わない? 俺ならこんな陰キャ弱者男性より君を幸せにしてあげられるよ?」
横浜は俺を押しのけると琴子の方に顔をグイッと伸ばす。クソッ、こいつ意外と力強いな。
「息が臭いのでそれ以上私に話しかけないでいただけますか、類人猿?」
琴子は笑顔のまま横浜に苦言を呈する。しかしその目は全く笑っていなかった。琴子からとんでもない怒りのプレッシャーが放たれる。そのプレッシャーに気圧されたのか横浜は怯んだ。
「えっと…今なんて言ったの瀬名さん?」
「聞こえませんでしたか? 耳が悪いんですね。では私も少し声を大きくしましょうか。『私は武光君一筋です! だからあなたとは付き合いません! 気持ち悪いので向こうへ行ってください! あと、息が臭い!』」
琴子は息を深く吸い込むと普段の彼女からは想像もできないほど大きな声を出した。その声はクラス中に響き渡った。
談笑していた他の生徒もこちらを向き「ヒューヒュー! お熱いねぇ! 横浜ざまぁ!」とわめきたてる。おそらくクラスの連中も横浜の横暴具合に腹を立てていたのだろう。
「私があなたの所業を知らないとでも思ってるんですか? それと武光君を罵倒したのを謝罪してください」
「クッ…」
流石の横浜も形勢が不利とみたのかその場から逃げ出した。横浜が教室から逃げ出したと見るやクラス中から拍手が溢れる。とりあえず撃退に成功したという事でいいのかな。
「ごめん、琴子。君に不快な思いをさせちゃった」
僕は自分が琴子を守り切れなかった事を謝罪する。彼女を守るためにももっと強くならなくてはならない。
「何を言ってるの? 武光君はちゃんと私を守って前に立ってくれたじゃない。本当にヘタレな人なら私を守らずに知らんぷりしてたと思う。武光君は勇敢で優しい人だよ♡ 自信もって!」
彼女はそう言って俺に思いっきり抱き着いてきた。ちょ!? 流石にクラスの人の前でこれは恥ずかしい…。
○○〇
~side横浜~
「クソッ、クソッ、俺があんな陰キャに…」
横浜英明は瀬名琴子に告白を断られたその日、そのまま学校をさぼって近くのラブホに来ていた。たまたま学校を出る途中に捕まえた自分の女の1人である柏木早苗を伴って。武光と琴子に罵倒されたストレスを早苗で発散させる。
「オラッ、もっと動けや! 全然気持ちよくねぇぞ!」
「あん♡ 秀君激しい…」
早苗は昨日は横浜に拒絶されたものの、今日はラブホに誘ってくれたので彼の機嫌が直ったものと思い込んでいた。行為の激しさを自分への愛だと勘違いもして。実際は横浜の行為が普段より激しいのは彼が早苗で憂さ晴らししているからであった。
「(あぁ、腹が立つ。決めた。絶対あの女…瀬名琴子を自分のものにしてやるぜ…)」
横浜のプライドはズタズタだった。彼にとって女に告白を断られたのは初めての経験だったのである。女など甘い顔をして口説けば勝手に股をパカパカ開くものと思っていた。
「(今度はもっと作戦を練らねぇとな…。ククク、楽しみだぜ)」
だがしかし、彼はその選択がさらに自分の首を絞めプライドを傷つける事になる事を彼は理解していなかった。
○○〇
以前も書きましたが、念のためもう一度。琴子は寝取られません。横浜はあくまでざまぁ要員でございます。
明日は朝7時に1話のみの更新です
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