彼女との放課後
「武光くーん♡ 一緒に帰ろ?」
本日の授業が全て終了し放課後になった。帰り支度をしていると瀬名さんが笑顔で話しかけて来る。
「うん、いいよ」
特に用事もなかったので僕は承諾した。彼女と放課後一緒に帰る…僕が長年夢想していた事がいよいよ現実になるんだ。チラリと前の席を見ると康太が泣きながらこちらに「頑張れよ」とエールを送って来ていた。…器用な事をするな。
おそらく僕に美人の彼女が出来て羨ましくて仕方が無いのだけど、それとは別に友人の恋路を応援したいというのがあるのだろう。ありがとう康太。やっぱり彼はいい奴だな。
僕は瀬名さんと一緒に階段を下り、昇降口で靴を履き替え、揃って校舎を出た。なんかこういうのいいな。彼女と揃って移動するっていうの。
時刻は午後5時過ぎ、少し小腹が減る頃である。
「せっかくだからちょっと買い食いして行かない?」
「私は武光君の行くところならどこでも付き合うよ♪」
彼女は僕の提案に快く乗ってくれた。瀬名さん…イイ子だなぁ。こういう子は全力で楽しませてあげたくなるものだ。今まで女っ気が全くなく、彼女がいなかった僕にそれが出来るのかというと微妙なのだが、それでも僕の全力を尽くそうと思う。
えっと…女の子も楽しめて尚且つ食べ物が食べられる場所というと。そうだ、最近この近くの公園に移動販売のクレープショップが出店しているらしい。結構美味しいらしく、クラスの女子が何度も会話に出しているのを聞いた。そこなら瀬名さんも喜んでくれるに違いない。
「近くの公園にさ、美味しいって評判のクレープショップがあるらしいんだけど…瀬名さんクレープは好き?」
「うん♪ 私甘い物大好き♡」
「じゃあそこにしよう」
僕たちは近くの公園へと向かう事にした。そういえば…2人で歩くときは車道側は男が歩くって聞いたな。僕はそれを意識しながら瀬名さんに車道側を歩かせないよう歩いた。
○○〇
公園につくと噂通りクレープの屋台があり、すでに何人かの人が並んでいた。僕達もさっそくクレープの屋台に並ぶ。後ろの方から見る限りでは沢山種類があるみたいだ。
「瀬名さんは何味のクレープにする?」
「むぅ…」
僕が彼女にそう尋ねると瀬名さんは不満そうな顔をして頬を膨らませた。えっと…どうしたんだろうか? 何か彼女の機嫌を損ねるようなことしたかな?
「武光君、私の事ずっと『瀬名さん』って名字で呼んでる…」
「えっ?」
「武光君は私の彼氏なんだから下の名前で呼んでくれなきゃ嫌!」
あー…そういう事か。彼女は自分が下の名前で呼ばれない事が不満だったらしい。それくらいなら…。
「こ、こと…」
あ、あれ? おかしいな。いざ彼女の下の名前を言おうとしても緊張してうまく言葉が出てこない。まぁ今まで下名前で呼ぶような異性って早苗…いや今はもう俺の中でランクが下がって柏木と名字で呼んでいるが…彼女くらいだったからな。
瀬名さんは僕が下の名前で呼ぶのを今か今かと待ちわびている。
「こ、こと…琴子////」
「はい、良く出来ました!」
瀬名さん…いや、琴子は満面の笑みで俺にそう言った。あぁ…可愛いな。こんなかわいい子が本当に僕の彼女でいいのだろうか?
「次でお待ちの方ー?」
そうこうしているうちに僕たちの順番が来た。何にしようかな?
悩んだ末に僕はチョコバナナ、琴子はイチゴと生クリームのクレープをチョイスした。僕は2人分のクレープの代金を屋台のおっさんに払おうとしたが琴子に止められた。
「自分の分は自分で払うよ」
「いいよ。僕は琴子の彼氏だからここは奢らせて。それにお昼にお弁当も作って来てもらっちゃったし」
「武光君…////// ありがとう! じゃあ次は私が何か奢るね♡」
「お2人さんお熱いねぇ…。おっしゃ100円まけてやるよ」
俺たちのやり取りが初々しいラブラブアピールに見えたのか、屋台のおっさんがクレープの値段をまけてくれた。ありがたい事だ。
僕たちは近くのベンチに移動し、そこでクレープを食べる事にした。7月のまっただ中なので夕方と言っても日差しは当然キツイ。僕はベンチの日陰になっている方を琴子に譲った。そしてその際にベンチについているゴミを手で払い、彼女が座る所に自分のハンカチを敷く。
「ありがとう武光君! 武光君ってやっぱり優しいね♡」
「いやいや、これくらいは皆やってることだから」
「ううん、そんなことないよ。さっき公園に来るときも私を車道側を歩かせないようにしてくれたでしょ? 中々出来る事じゃないよ」
彼女はそう言って熱い目線を僕に向けて来る。僕は照れくさくて少し顔を背けた。良かれと思ってやったことをいざ面と向かって感謝されると照れくさい。
「あっ、武光君照れてる。可愛い♪」
「う、ううん////」
僕たちはベンチに座ってクレープを食べ始めた。
○○〇
甘いひと時
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