手首がきれい

手首がきれい

滑り台が厚顔無恥に光ってて猫背で齧るカロリーメイト

ホバリングしている蜂の二、三匹かわしては公園の出口へ

子を持てば何かがマシになるなんて幻想ですかナガミヒナゲシ

イヤフォンで栓をしていた生活にきみの方から飛び込んできた

性別が邪魔で絆を保てない　いつもわたしはおなかがいたい

一本のアコギが弾かれたがってる心療内科の待合室に

この医者はわたしのつらさに関心があんまりなくて割と助かる

駅前のスギ薬局で落ち合って真夏のゆるい歩幅で帰る

住もうよと提案すれば首都はなぁ、首都はなぁって首都に失礼

窓に雨、雨に窓降る　暴動の動画に挟まる広告が邪魔

わたしのはどうせ机上の貧乏で結構ですと吹くカビキラー

捨てちゃいなさい　うん、わかる。でもこれはいい梅干しが入ってた箱！

桃をむく手首がきれい観光で現世に来てるつもりの手首

桃ひとつ食べたらすぐに歯を磨く　桃色の唾、わいてこないで

一滴のきみの涙が落ちている　来週、椅子が届くところに

まだきみに貸しっぱなしのシャツがあり借りっぱなしの歳時記がある

ああ、あれはクリニックから帰路につくわたしの背中、または秋虹

また今度ペティナイフの使い方教えるからと言って別れた

はやくわけわからなくなりたいなんて思ってごめんクシコスポスト

流れ星光って消えて大丈夫、爪はしっかり二十枚ある