火遊びから大火事

白川津 中々

▪️

 他の女に手を出してしまった。

 いやそれだけならいい。時計を見て愕然。夜の九時。妻はとっくに帰ってきている時間。なんと言い訳をすべきか考えるも頭が回らず、ひとまずスマートフォンを確認。メッセージ二十件。着信十五件。記録更新。ちっとも嬉しくない。



「おはよう。どうかした?」



 お目覚めの彼女に「なんでもないよ」と一言。きっと俺の顔は引きつっていただろう。だがそんな事を気にしている場合ではない。なんとかして整合性のあるアリバイを工作せねば死ぬ。とりあえず、メッセージを確認……






”どこ?”


”え? どこ?”


”GPSで場所分かるよ?”


”ホテル街じゃん”


”着信出ろ”


”弁護士”


”覚悟しておけ”


”次顔を合わせる時は法廷だぞ”




 これ以上見るまでもない。そっと画面を非表示。もはや手遅れにつき、調停後の事を考えよう。



「ねぇ、君」


「なぁに?」


「妻と別れるから結婚しようって言ったら、どうする?」


「うーん……」



 お、まんざらでもないか?



「いいけど、月三十は欲しいな。大負けに負けてね。あと、寝室は別々で。家事もしないよ。子供もいらないから」


「……」



 ……しばらくは、シングルだな。

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火遊びから大火事 白川津 中々 @taka1212384

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