ハングズマンズノットの下で
白川津 中々
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そうはいってもやはり命は惜しかった。
やることなす事上手くいかずもはや死ぬ他に道はないと覚悟してのハングマンズノット。揺れる輪っかに恐れ慄く。
なにを躊躇しているんだ。死ぬしかないんだぞ。生きているだけでもはや地獄だ。
頭の中でなんども踏ん切りをつけようとするも足は震え一歩が踏み出せない。目の前の穴に首を通して台座を蹴るだけですむのに、それができない。頸動脈が締まれば数秒なのに、これから先に訪れる数年の苦しみが一度に清算できるというのに、どうして決心できないのか。命というのはそこまで惜しいか。生きていたって、なんともならないというのに。
いけ。いけ。いけ。
必至の鼓舞。だが効果がない。股座が温かくなった。失禁だ。吊ってもいないのに、俺は小便を漏らしたのだ。こんな情けない話があるか。途端に涙が頬を伝い、ポチャリと小便溜まりに落ちる音がした。なんとも馬鹿らしく、間抜けな音だ。そしてもっと間抜けなのが、そのまま台座から落ち、涙と小便まみれになりながら嗚咽している俺の姿だ。こんなに冷静に自分を客観視しているというのに、涙が、声が、恐怖が止められず、蹲るばかり。あぁ、死ねなかった。死ねない、死ねない。死ぬのが怖い、恐ろしい。しかし人生も、あぁ人生も恐ろしいのだ。俺はこれからどうすればいいのだ。分からない。分からない。生きるも死ぬも、ままならぬというのに、なにも、分からない……
ハングズマンズノットの下で 白川津 中々 @taka1212384
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