第38話しばしの別れ
「ならほど、やはり帝国のあの遺跡に向かうとそうおっしゃられたのですね。高坂閣下」
頬にできた生傷をさすりながら信盛は書類と格闘しながら昌信からの報告を聞く。
「閣下はよして下さい。信盛様、ワシは農民出身の身、まして閣下と言われる身はありませんぞまったくあの事をまだ引きずっておられるのですか?」
「そりゃまだ引きずりますよ。まさかあの状況で僕達が負けてしまうなんてね。魔術スキルが使えない状況での戦いなら、あなたが一番強い事がわかりましたからね」
そうあの時、帝国のとある地下での激闘の事を言うのだ。あの時二人は昌信に対して言ってはならない事を言ったためにふたり揃ってボコられてしまったのだ。
「まぁ、そのあと一応僕達の仲間として計画に参加してくれる事にしてくれたのは良かったのだがまさか条件をつけてくるとは思いもしませんでしたよまったくしかもこの帝国にいる不穏分子をいつのまにか半分程消しているしまったくあなたみたいな化け物があと三人もいるとは思いもしたくは無いですよ」
「そう言って頂けるとありがたいですな、ちなみにワシは海津城で対上杉にいた為に川中島以降の戦にはあまり呼ばれた試しがありませんが、後の三人は私に比べられない程戦経験がありますのでもしこの世界にいたならば覚悟はしてくださいね」
「マジかよ、流石の僕もこれ以上は許容範囲を超えてしまうぞ」
心底嫌そうな顔をする信盛に対してニヤニヤと笑みを浮かべる昌信。歳相応なら老獪な人物に見えるのだが今の昌信は少年の姿をしている為かイタズラをした子供のらように映ってしまうのだ。
「で、今度はどんなようなんですか?この前諜報関係の権限はあなたにあげたのですから大将閣下これ以上は僕にもあげられる権限はないですよ。まだ誰もあなたの事を大将にした事は極秘なんですからね」
ボコった時に昌信は彼等の話を公開しない事を了承する代わりにある条件を出した。
ひとつは諜報機関の権限、ひとつは外交の権限ひとつは勝頼の安全と自由を条件とした。
普通ならこんな馬鹿みたいな条件は通らないはずだったのだがそこは腐っても武田の重鎮、難なく仕事をこなしてしまい「これ以上やると計画に支障が出るからやめてくれ」と信龍が懇願するほど成果を上げてしまったのだ。
「いや、久しぶりにワシも働いてみたのだがな思いの外案外決まってしまうとは思っていなかったのでな。リハビリがてらにはなったからな」
「俺と叔父さんが数年かけていた事をあなたは一日で壊滅寸前までおいこむとはな。本当化け物過ぎるぞ」
非難の目を向けられる少年もどきは何も言い返さずに話題を変える。
「そんな事はどうでもよい、それよりも勝頼様が遺跡に向かう事は今伝えた事の意味はわかるだろうな?」
「ハイハイ、わかってますよ。何も我々からは手を出しませんよ。ですが監視だけはさせてもらわないと流石に困りますよ」
「あぁそれはわかっているさ、ワシ自身が向かうことにしているからな。もちろん、隠密スキル系はほとんど取っているからなまずバレる事は無いであろうよ」
スキルカードを信盛に渡しながら昌信は得意げない笑顔を向ける。
そのスキルカードを見た信盛は書類との格闘をやめてしまうほど食い入るように見てしまっていたのだ。
「お前!?、これ!?普通にアサシンマスターレベルですよ!こんなに極めて一体何をするかなんですか!」
一瞬、いつもの言動が崩れそうになってしまうがなんとか持ち直す事ができたがそれでもあまりにも昌信の規格外過ぎるスペックに焦ってしまう。
(「この人、多分知らないけど今全盛期以上にはっちゃけていると思うんだけどな。あと何か違うと思ったらちょっと忍者ぽい装備になっているしな。なんか一番異世界を楽しんでいるような気がしてならない」)
「まあ、そう言う事だから、後はワシがするから手は出さないでくれよ」
それだけ告げると音もなくその場から消えていなくなってしまった。
「まったく、あのやばい奴を入れるべきではなかったと」
「聞こえているぞ」
バッと振り向いて探してみると見つかる事がなかった事に信盛はため息をつくのも堪えながら書類と格闘する事を選んだ。
「さて、これで帝国側は手出しはできない後は魔王軍だけを警戒すればいいだろうな」
昌信は帝国の一番高い屋根の上に立ち周囲を見渡しているのであった。
「とりあえず、勝頼様の周りを監視することから始めるとするか」
昌信はこれから始まる、勝頼の冒険を支える為に監視もとい見守ることにしたのだ。
しかしそんな決意を決めた昌信を他所に勝頼はすでに危機を迎えていた。
彼は夜に出て行く準備しておりすぐに出ていこうとしていた時何故か昌景とバッタリ出会ってしまい現在問い詰められている状況にある。
「で、結局どこにいくつもりだったの!」
彼女は凄く怒っていたのだ、理由は言うまでも無く俺が理由を言わないからだろうな。
「いや、少し見たい物があってなそれでそこに向かうだけだから早く帰ってくるつもりだよ」
「いや、どう見てもその荷物の量で言い訳は出来ないでしょう!!」
(「確かにこの荷物を見られたからには言い訳をするには無理があるだろうな。だけど今回は一人で行かなければならない気がするんだよな。そんな気がするんだ。」)
俺は問い詰めてくる、昌景の肩に手を置く。
「ヒャイ!!、いきなり何!?」
「なんでそんな声を上げるんだ。すまないが昌景こればかりは一人で行かなくてはならないんだ。わかってくれ!」
嘘は言って無いはずだがどうしても一人しかダメだと言う事を強調したから大丈夫な筈。
「そんなんでこの私が納得すると思っていると思っていたのか!!」
バゴンと頬に衝撃が走りそのまま吹っ飛んでしまう。やはり俺は昌景を超える事はできなかった。
「で、これで全員かでは行くぞ」
「「はーい」」
「わかりました」
(「結局昌信以外の全員と行く事になってしまったがまぁ、それでも構わないから」)
少し笑みをこぼしながら俺はこの三人の仲間と一緒に帝国の知られざる歴史にたい向かう事になるのはまた少し後の話になであろう。
何にせよ勝頼の奮闘は続く事になるであろう。
「えっ、ワシだけ除け者なの?」
約一名は除かれてしまうがまぁどこかで合流できるだろうと多分思う。
武田勝頼異世界奮闘記 @kasugamasatuki
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