記憶少女

@HALkun0416

第1話

 [私は…誰…?]

目が覚めると全く見たことのない病室のベットに私は横たわっていた。

[ここは…病院?]

私は事故にあってここの病院に運ばれたらしい。でも何が起ったのかさっぱり分からない。思い出せない。

 私に何があったのか、どうしてこうなったのか、前の私が誰なのか。

[神奈月さん。体の調子はどう?どこか痛いとことかはないかな?]

 そう言いながら病室に入ってきたのは、綾瀬先生だ。私が事故に遭う前からの知り合いらしい。

[えっと…。事故にあう前の私を知ってるんですよね?あの、教えてくれませんか?]

私は綾瀬先生に言った。

[…。]

先生は、黙り込んだ。

[先生?どうしたの?]

先生は、話そうとしない。しかも悲しい顔をしている。

[僕は、前の君を知っている…。でも、今は話すことができないんだ。またその時が来たら話すよ…。]

先生はニコッと渋い笑いを見せた。

[そうですか…。]

私はそっと窓に目線を向ける。

[神奈月さん。そういえば君の兄さんが見舞いに来てるよ。]

私の兄、神奈月 鷹。家族で唯一の兄弟。

[おう。元気にしてたか…?]

鷹は、少し笑いながら言った。

[えっと…。兄さん…?うん。元気にしてるよー。なんかごめんね?私がこんなんになっちゃってさー…。あはは…。]

先生以外と話すの初めてだなぁ。

[いやお前は何にも悪くない。気にすんな。それにしても、お前が生きててほんとによかったぜ…。俺も一人はもう嫌だからな…。]

鷹の言い方は、前は一人だったと思わせる発言だった。それを考えた時私は何をいえばいいのか分からずに窓を見つめた。

[鷹さん。妹さんは、来週には退院できますよ。]

綾瀬先生がそう言うと鷹はこう言った。

[そうですか!?よかった。もっと遅いかと思ってました…。]

鷹は心配してくれた。

[そうですね。僕も妹さんが元気になってくれて嬉しいです。]

先生は次はちゃんと笑っていた。

[では、ありがとうございます。]

そう言って鷹は病室を後にした。

[じゃあ、僕も仕事だから居なくなっちゃうけどななあったら教えてね。]

先生が席を立つ。

[あの先生…。いつになったら教えてくれますか?]

先生は私の言葉で立ち止まる。

[…。本当に辛くなったときに話すよ。]

先生は最後まで笑顔で居た。

そしてそのままその日が過ぎた。


 [……て!!やめて!!]

ん…?これは私の声…?

[うるさい!!あんたが居るからこうなったんでしょうが!!]

これは私のお母さん…?

[母さん!!妹を泣かすなよ!!まだ小学生なんだぞ!!]

これは鷹の声だ。

[鷹!あんたはね、物分かりがいいから許されてんの。それに対してあのガキ。本当に産まなければ良かったわ。]

どんどんエスカレートする母。

[なぁ母さん。本当に消えればいいのは誰だと思う?]

その時の鷹の顔は、まるで鬼だった。

[…さん!!神奈月さん!!]

[ハッ!!]

ばっ!!

私はベットから跳ね起きた。

[はあ…はあ。]

呼吸がとても荒い。

[神奈月さん大丈夫?どこか具合が悪いのかい?]

綾瀬先生は、焦った表情で語りかける。

[…いえ。悪い夢を見てて……。]

[一体どんな夢だったんだい?]

先生が言った。

[えっと、家族?が喧嘩してる夢です。夢にしてはやけにリアルで怖かったです。]

その時先生の頬から汗が溢れた。

[それは…嫌な夢だね。神奈月さんは喧嘩なんてしたらいけないよ?]

[私はしないですよ。]

そう言って先生を睨んだ。

[じゃあ大丈夫そうだからもう行くね?]

…あれは一体何だったんだろう。

私は眠りについた。

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