第15話 年越し
12月31日、私はソファーで年末恒例の歌番組を見ながらゴロゴロしている。お母さん達はキッチンで年越し蕎麦の用意をいてるみたい。
「なつちゃん、みかん食べる?」
「ん〜…………いらなぃ………」
なつちゃんはすでに目をトロンとさせて眠そうに私に寄りかかっている。なつちゃんはいつも10時にはベッドに入って眠ってるらしい。(現在時刻23:00)
「二人ともお蕎麦できたよ」
七海さんが持ってきてくれたお蕎麦には海老、じゃがいもの天ぷら、かき揚げがのっていてすごく美味しそう。
「ほら、なつちゃん、お母さんがお蕎麦持ってきてくれたよ」
「ん〜…………おそばぁ?」
お蕎麦の匂いに釣られたのか、なつちゃんがむくりと起き上がった。
寝起きのしょぼしょぼの目をするなつちゃんが死ぬほど可愛い!!
「熱いからフーってしてから食べてね」
「いただぁきます………あつっ!」
寝ぼけてるなつちゃんには七海さんの注意が聞こえてなかったっぽい。いきなり蕎麦を啜って咽せていた。
「なつちゃん大丈夫? お口すすいできたら?」
「うん行ってくる」
全く、まだまだなつちゃんは子供だね。
ま、その点私はもう高校生! 口の中を火傷なんてしないけどね!!
私は蕎麦をよく冷まして口に入れた。
「あっ!!」
◇ ◇ ◇
「二人して口を火傷するなんて、まだまだ子供ねぇ〜」
お母さんがニヤニヤしながらお蕎麦を啜る。お母さんも火傷すれば良いのに。
「優奈〜お母さんは火傷しないわぁ〜。お と な だからね」
この母親うざすぎでしょ。舌でも噛まないかな
「ふふっこれを機にお母さんをそんk…………っ!?!?!?」
「冬美!? 大丈夫!?」
「し、舌噛んだぁ〜」
ざまあみろ! へっ!
「あははっ! なつちゃんあと5分だよ」
「すぅ………すぅ……」
ありゃ〜なつちゃんはもう限界だったかぁ。
なつちゃんはもう夢の中に入ってしまっていた。
「お母さん、なつちゃんお部屋に寝かしてくるね」
「………………わかったわ、お願いね」
お姫様抱っこでなつちゃんを抱き上げてなつちゃんの部屋に向かう。
なつちゃんをベッドに寝かせてふと隣を見ると机の上に本が置いてあるのに気づいた。
「なんだろ」
本を開くと写真がいっぱい貼られていた。
写真は私と一緒に撮ったツーショットが殆どで、見ればその時の情景が濃く思い浮かぶ。
「ふふ、今年1年は楽しかったなぁ。なつちゃんに会えてお姉ちゃんは幸せだったよ」
アルバムをパラパラ捲りながら今年1年を振り返る。
なつちゃんとのデート、交流会、文化祭、お祭り、旅行、いっぱい楽しいことがあったなぁ。
「来年も楽しい1年にしようね」
私がそう言うと同時に年越しの鐘が鳴った。
「ゆうお姉ちゃん大好き!」
「……………ふぇ?」
私は何が起きたのか分からなかった。
鐘の音が聞こえたと同時、なつちゃんが起き上がって私の口に………………
「えへへ、お母さんたちにはナイショ、ね?」
「…………わぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!?!?!?!?」
「お姉ちゃんうるさい!!」
「わわわわわ、私の………………初めてがかぁぁ!!!!」
私の意識はここで途切れた。
◇ ◆ ◇ ◆
「ゆうお姉ちゃん? どうしたのぼーっとして」
「んぁ……………あれ、うたた寝してた?」
「もう! あと5分で年越しだよ!」
「あー…………起こしてくれてありがと」
目を擦りながら机の上に置かれた缶を取って喉に流し込む。
「あー!!! また飲んでる! また眠っちゃうよ!」
「ん〜? あと5分くらいでしょぉ、大丈夫よ」
「もうっ!………………私も」
なつちゃんも缶のお酒を飲む。
なつちゃんの顔はほんのり赤くなって小さい頃を見てるみたい。
「ゆうお姉ちゃん、なんの夢見てたの? 寝言凄かったよ」
「んえ? マジで? んー確か、小さい頃、なつちゃんと初めて会った頃の夢見てたよ」
「…………浮気」
「いやいやいや!!! 同一人物でしょ!? ていうか、なつちゃんと結婚した覚えないから!!」
「ふふっ♪ それを言えるのも来年までだからね」
「…………そうだね」
日本は大きく変わった。いや、変わる。来年には同性婚が認められて世間は大きく変わると言われている。
もちろん、私たちにも言えることだ。
「ゆうお姉ちゃん……………いや、優奈」
「なあに、奈月」
「大好きだよ」
「私もよ」
鐘が鳴ったと同時、12年前と同じように私となつちゃんはキスをした。
ああ、妹って…………良い♡ リアン @556514
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