第7話傍観者が巻き込まれた話


日が上り、私は朝食の準備を済ませ学園に行く準備を始めていると何もない空間から引き戸が現れ、そこから藻女が現れた。

特殊な結界で、居住スペースを生成したとか言っていたが……

そんな魔法は、この世界でも聞いたことがないから……やっぱり神の使いってすごいなと感心していた……

していたのだが……現れた藻女は白い浴衣を……乱して……髪の毛や尻尾をボサボサにしたまま寝ぼけ眼の姿だった

「おはようなのじゃ……姉上……」

そして、ふらふらとした足取りで、私の方に来ると、そのまましがみつき……

「Zzz……」

そのまま眠りだすが……

私はため息をつくと

「藻女!いつまで寝ているの!早く起きなさい!」

ビシッと大きな声を出しながら、藻女をひっぺがした!

「うな〜」

急に引っぺがされたのが不服なのか、変な声を出しながら、また私にしがみつこうとしたが……

朝食の匂いに気づいたのか、動きが止まり……

周囲を見渡し……一気に目を見開いた!

「うにゃ!?」

そして、ひと鳴きすると素早く居室空間に戻り……

「おはようなのじゃ!今日もいい天気じゃな!!!!!」

服装を整え、何事もなかった様に出てきた

まあ、本人(?)が気にしているなら、無理に突っつく必要もないから、流すことにした


朝食のパンを頬張りながら

「妾もご飯の準備を手伝いたかったのじゃが……朝はどうにも弱くてのぅ……」

藻女は、残念そうに呟くが……

「苦手なのは、わかったけど……無理に起きなくても大丈夫だぞ?」

私は朝の準備を済ませ、出かけようとしたが……

「どこに行くのじゃ?」フォークで目玉焼きと格闘していた藻女が外に出ようとした私に気づき……慌てて近寄ってくる

「どこって、学園だ。一応学生だからな」

そういうと慌ててテーブルに藻女は急いで戻……いや、自分の空間に戻ると昨日の服装に着替えて出てきてた、その後、途中で目玉焼きを急いで口に詰め込むと……

「もぐもぐ……ごくっ!!妾も行くのじゃ!」

こちらに走ってきた!

「ああ、口元をそんなに汚して……」

私は懐から……ハンカチを取り出して拭こうとしたが……

「うみゃ〜!痛いのじゃ!そんなに強く擦らないで欲しいのじゃ!」

顔を背けながら嫌がる

「藻女が顔を汚すからでしょ?いい子だから、動かないでね?」

たった一晩で、母性に目覚めたのは……我ながら意外だった


とりあえず、学園に行くのに駄々をこねる事が予想され、私は服飾スキルを使い学園の初等部の制服を作成すると藻女にそれを渡した

茶色をメインとした色のワンピースで大きなリボンが胸元と腰にある。

スカートの部分には取り外し可能の厚手の生地が腰と両サイドを隠せるように覆われており、内側が風通しの良い素材で出来ていることから、気温で調整出来るようになっていた。

それと合わせて大きめのベレー帽をおしゃれだ

これに、藻女に合わせて、尻尾と耳穴を開けたが……

「いやじゃ……妾……この服がお気に入りなのじゃ……」

そう言うが……その服装は……砂埃がどこもかしこも付いていて……

「あなた……まさか、昨日の服を洗わずに?」

思わず目が笑ってしまった

「ひぃ!?だって……妾……洗濯とか……出来な……」

「ん?なにか意見でも?」

私の一言に藻女は、渋々と制服を持って着替えに行くが……着替えた服を持ってくる様に伝えるのも忘れなかった

「妾の服でなに……なんでもないのじゃ!」

変な事を口走りそうになった藻女だが、私の表情に短い悲鳴をあげるとそそくさと襖の向こう側に姿を消した


それから、しばらくして藻女が着替えを終えて出てきたが……

「うむ……なんじゃ……恥ずかしい気がするのじゃ……」

藻女はスカートの裾が気になるのか手で押さえなが

そう言い……私を見ると

「妾だけが、せいふくとやらを着て、お主はなぜそのような服装なのじゃ?」そう言ってきた

自分の服装は男子学生の紺色のブレザーとズボンだが……

「その姿も良いが!お主にも妾と同じ服を着て欲しいのじゃ!」

そうお願いされて、少し悩む

姿を固定できるようになって、衣装についても選択も出来るが……別に女性の姿の時は衣装も違和感がないように見えるし……

口元をへの字にして、私を見る藻女に……私はため息をつくと……

ベレー帽のない藻女と同じ制服姿に変更すると藻女は目に見えて上機嫌になった




「なんか……いつもよりも股の辺りがスースーする……」

通学路を歩きながら、私は手でスカートを軽く抑えつつ、ドキドキしながら歩く……

その私の目の前を藻女は尻尾をブンブン振り回しながら時々私の方を見て笑顔になる

そこで気になったが

「なぁ?藻女?お前の大好きな姉上ってどんな奴なんだ?」

初めは偉そうなガキだと思ったが、この姿になり、すぐにデレる藻女にこの疑問を投げかけた

「姉上様の事じゃな?

一言で言うと、妾に理想の未来じゃな!」

そう言い、自慢げに私を見る

「妾は、妾の姉妹の中で末妹でな!」

まあ、尻尾それぞれに個性があると言うような話だったが……

「三女の玉姉上は、料理もできて、努力家で、とても綺麗なのじゃ!たまに抜けている所もあるが、それはそれで可愛いのじゃよ!」

確か九尾狐の玉藻前の逸話として、蝉に化けて追っ手を撒こうとしたが、霊験あらたかな池に真の姿が曝け出された話を思い出した……玉藻前の幼名が藻女だった筈だから、少し変な気がするが……

そんな話をしている間に

学園に到着し校門を通り抜けると……

いつもなら、なぜかここでヒロインちゃんにお出迎えされるのだが……

「どうしたのじゃ?」

急に立ち止まった私に藻女が話しかけてくる

それに慌てて返事をする

「いや、いつもなら……後輩ちゃんが来ているんだけど……」

「昨日妾に抱きついた小僧か?」

「……そうだけど……そんな日も……」

ちょっと違和感を感じたが……イベントに巻き込まれているのか?と考えていると……

(急になんの用っすか?こんな所まで追いかけてきて!?)

(うるさい!なんでボクがこんなに思っているのに!いろんな奴の後を付き纏って!)

微かにヒロインちゃんの声が聞こえた!

これがケモ耳の力か!?

しかも、取り込み中のようだって言うか!!

私の事じゃないか!!!!!

私は慌てて周囲を確認し、声のする方へ走り出す!

校舎裏の方か!!!!!

(ボクのものにならないなら……お前なんて……お前なんて!!!!!)

声がやばい!!!!!校舎裏に到着すると……壁に追い詰められているヒロインちゃんに……

息を荒げた男子学生が……刃物を手にして飛びかかろうとしていた!?


一刻の猶予もないと判断し……さらに力強く地面を蹴ると……男の刃物を蹴り飛ばしながら、ヒロインちゃんを守るように前に立つ……

「大丈夫か後輩?」

私は、視線を後輩に向けると……後輩は……惚けて私を見て、すぐに……

「先輩っすか!?」

さらに驚いた表情で私を見ていた!

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傍観者の私が乙女ゲームの舞台に巻き込まれる話 @kisaragikanoto

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