第6話 本題と望み


家に無事帰る事が出来たが……

「ただいまなのじゃ〜」

藻女が私の尻尾にしがみ付きながら、そう言うと……

私はゲンナリとし、ため息をついた

私の姿は再び狐耳の女性の姿になっていた

その経緯を思い出したからだ



それもこれも……

「嫌じゃ!嫌じゃ!姉上の姿じゃないと嫌じゃ!」

道中藻女が、駄々をこねて地面を転がったせいだ。


「妾がこのまま駄々をこねれば、要らぬ手間をかけるが……いいかのぅ?」

そう言いながら、私を見上げる藻女の顔を踏みつけそうになったが……我慢して……姿を変化させたら、尻尾に抱きつかれて、変な声が出たが……我慢して帰ることになった


「さて、そろそろ私に何を頼みたかったのか、話してもらってもいいかね?」

私は、尻尾を前の方にやり、藻女と視線を合わせる

「うむ!妾もいい加減話を進めようと思っておったところじゃ!」そう言うと、名残惜しそうに、藻女は尻尾から手を離し姿勢を正すと……私を見る……

尻尾の毛がところどころに付いているが、本人は至って真面目な雰囲気で話そうとしているから、黙って様子を見た。


「妾が助けて欲しいことは、この世界の異物についての事じゃ」

藻女が言うには、この世界は異界の神が管理する箱庭のような世界で……主に娯楽小説を舞台にした世界という事だ


まあ、それは転生してから、何度も見てきた事だから、理解していた。


転生者も、その娯楽を引き立たせる為の存在で一時的に他の世界から借りていたらしいのだが……


「最近、数が合わない事が増えてきておる事と……本来、役者として魂のないはずの器に魂が生まれておる事が判明した」

異世界の法で、魂にあるものを弄ぶ事は禁じられているらしい……

「まあぶっちゃけ、この世界の管理しておる神を探す手伝いをして欲しいのじゃ!

本来なら、転生を管理する為に集まる会合にも欠席しておって……原因究明を内密に任されたのじゃ……じゃが……

ちょっとしたトラブルがあって……妾の力が拡散してしまったのじゃ!!」

そう言いながら、藻女は癇癪を起こしたかのように、尻尾で床を叩きながら、地団駄を踏んでいた

「なぜ!余計な事を言って、災いの種を増やすのじゃ!!」

大声で、怒鳴った事から、しょうもない事だろうと聞き流す……帝を誑かしたり、傾国のやらかしたりと九尾狐には悪い噂しか聞かない……


「とりあえず、妾はおぬしに力を貸してほしくてじゃない……「わかった、条件付きで協力しよう」断るのもわかるが……なんじゃと……!?」

私に返事に藻女が目を見開き、顔を強張らせる!

「なぜ、協力に応じるのじゃ!普通、ここは断る!

俺を巻き込むな!じゃったり、俺はゆっくり暮らしていると言うところでは……」

と言ってくるが……

「条件付きって言っただろう?」

その言葉に、藻女は頷き……

「そうじゃな!その欲こそが人間なのじゃ!

金か?名誉か?それとも……妾か?

恥ずかしいのじゃ……妾をそんな目で見ておったとは……やはり、このような見た目になっても……

妾は……お母様とは違い……モテるのじ……「私の願いは……転生させて欲しいだ」」

藻女が目を丸くさせ……

「おぬし……何を言ってもおるのじゃ?転生したいとは……死にたいという事じゃぞ?」

尻尾を振るわせながら……怒りの籠った目で私を見る

「ああ……私は死にたいんだ」

その言葉に……喉を鳴らしながら、藻女は唾を飲む

「おぬしになにかあるかは、妾は知らぬが……命を粗末にするものに生まれ変わる事など出来ぬぞ」

そう言ってくるが……多分、いま私の考えを伝えたところで……多分受け入れられないだろうと……話を切り上げることにして……

「まあ、それに関しては……平行線になるかどうかは、置いておいて……なんで私なんですか?」

一つの疑問を投げかけた

私の事を知っているなら、普通この流れにならないはずだから選定基準を確認したが……

「占いじゃよ!あと感じゃな!おぬしなら……妾の期待に応えてくれるとな……おぬしに発言で少し考え直しているのじゃが……」

随分と胡散臭い選定基準だ……

「……まあ、おぬしと争っても碌な結果にならんので、妾から提案じゃ!姿を固定化した妾の力じゃが……分散して弱まってこの力じゃ!妾が力を取り戻した暁には……死ぬなどと2度と思わぬような褒美をくれてやるのじゃ!」

そう言って藻女が胸を張って笑い……内容を聞こうとしたが……それ以上は請負、達成せねば応えぬと誤魔化された


まあ……転生が不可能でもこの世界から出る事ができれば……生き飽きた今を変えられるかもしれない……


「わかった……だが、もし私の期待を裏切るような真似をしたら……全力でその目論見をお釈迦にしてやるから、覚えてろ!」

私はそう言って……藻女に手を差し出す

そして、藻女も私に手を握り

「良いのじゃ!妾の言葉に二言はないのじゃ!」

そう力強く言い……ふとした直感で……

「妾をプレゼントっとか言ったら、その尻尾……襟巻きにするからな……?」

冗談を言うと……藻女は、視線を逸らし……手汗をかきながら震え……

「なっ……ないしょ……なのじゃ!」

と言ったが……この駄狐……まさか……マジでそう言うつもりだったのか?と不安にかられた

1日の終わりだった

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